創業品開発者に入社報告 バンドー化学の新人研修 阪東直三郎氏の墓前で

2023.04.20
地域歴史

研修の一環で座禅に挑戦したバンドー化学の新入社員ら=兵庫県丹波篠山市沢田で

神戸市に本社を置く総合化学メーカー「バンドー化学」の新入社員研修がこのほど、兵庫県丹波篠山市沢田の小林寺(飯田天祥住職)で行われた。明治期に同社の創業品として「木綿調帯(ベルト)」を日本で初めて開発し、同社の礎を築いた阪東直三郎氏が同市出身で、阪東家の菩提寺が同寺であることが縁。コロナ禍を経て4年ぶりとなった研修に新入社員27人が参加し、座禅を行ったほか、阪東氏の墓前で手を合わせ、企業人としての決意を捧げていた。

阪東氏は幕末の嘉永3年(1852)、旧篠山藩士・浦山半十郎の子として生を受け、後に阪東家の家を継いだ。

若くして故郷を離れ、東京へ。産業用の布製ベルトの研究に注力し、阪東式木綿調帯を開発した。当時は外国から買い入れたベルトが使用されていたが、阪東氏の開発により、遅れていた日本の工業化促進の一翼を担った。

バンドー化学の前身にあたる「阪東式調帯合資会社」が設立されたが、氏は調帯の試験運転中に事故に遭い、明治42年(1909)に57歳でこの世を去った。

同社は、同寺を訪問し、自社の歴史を知ることや、阪東氏の精神を知ってもらおうと、新入社員を対象に研修を実施している。

阪東氏の墓に参り、手を合わせる新入社員

新入社員らを前に飯田住職(57)は、釈迦の逸話を紹介しながら、「仏教で一番大切なことは偏り過ぎない『中道』。お釈迦様も初めは苦行に偏ってしまったことがある。会社では思い通りにいかないときもあると思うが、『偏っていなかったかな』と思い返して。周りの人に客観的に見てもらうことも大事」などと語りかけた。

また、阪東氏のことにも触れ、「明治維新で侍の身分が取り上げられても、自らものづくりに挑んだ。阪東さんの夢が今のバンドー化学の成功に結び付いている。皆さんも夢をしっかり持って」とエールを送った。

その後、座禅に挑戦したほか、阪東家の墓に参り、手を合わせて入社と決意を報告した。

新入社員の男性(27)らは、「当時の日本で木綿調帯を開発され、歴史に名を残されたことはすごいこと」と言い、「ここで働かせてもらうことと、名に恥じないよう頑張りますと報告しました」と笑顔を見せていた。

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