古民家で創作料理店 両親・姉妹で切り盛り 「また一緒に過ごす日来るとは」

2023.04.28
地域

店を切り盛りする川本千都子さん(右)と石川幸生さん。2人の前に並ぶのが昼の「御膳」1人前=兵庫県丹波市氷上町石生で

兵庫県丹波市氷上町石生1023に、木造の古民家を改装した、和食と韓国料理を組み合わせた創作料理店がオープンした。農地付き1300坪という広い敷地を持ち、大阪府豊中市から丹波市へIターンした女性と、丹波市と豊中市の二拠点生活をする両親と妹が、家族総がかりで田舎の自然や生活を楽しみつつ、店を切り盛り。父親が育てる野菜や果物を母と娘2人が提供する。「細々でも、かわいがってもらえる存在になっていければ」と、ゆったり構えている。

ほぼ元の所有者の頃のままの「きりん亭」の玄関

林勇男さん(79)、貴美枝さん(75)夫妻と、娘の川本千都子さん(53)、石川幸生さん(51)姉妹。娘3人がそろって嫁ぎ、林の姓を残せなかったことから、貴美枝さんの「貴」と「林」を合わせ、店名は「きりん亭」。「ささやかな親孝行」(川本さん)の思いを込めた。川本さん以外は、豊中市との2拠点生活。

林夫妻は、週末を過ごす別宅を丹波市春日町小多利に持ち、家庭菜園を楽しんでいた。物件を手放した後で、本格的に畑をしたい気持ちが勇男さんの中で高まり、昨年、再取得した物件が大きな屋敷。母屋を取り囲むように農地があり、姉妹の夫も週末農作業に汗を流し、一年かかって畑や果樹園を整えた。

両親のいなか暮らし計画に付き合ううちに、川本さんが生活の糧にと、飲食店経営を発案。貴美枝さんは韓流ブーム前から韓国料理に興味があり、道路拡幅で立ち退きになる20年ほど前まで、尼崎市で韓国料理店を営んでいた。子どもが大学に進学し、手がかからなくなった姉妹が、母を飲食の現場に呼び戻した。

昼は「御膳」(2200円)と、お子様ランチ(1000円)。夜は、一品料理を提供する。「御膳」は、お盆2つ分ほどのボリューム。キムチ、チヂミ、ナムル、チャプチェ、蒸し豚にポテトサラダ、ご飯、スープ、デザートなど。自家栽培野菜をおいしく食べてもらうために、野菜を多く取る韓国料理のテイストを取り入れた。ニンニクと辛さを控えたあっさり味。酸っぱく甘い万能タレ「チョジャン」などの調味料も手作りする。

貴美枝さんと調理を担当する石川さんは「少しずつ、毎日少量ずつ仕込んでいます。『おいしい』の声がうれしい」と頬を緩める。閉店は午後8時。自分たちが好きになった静かな場所を壊す近所迷惑は避けたい気持ちからだ。

ふすまを取り払い、客席は28畳の1フロア。客席から庭や畑が見える。川本さんは「土いじりをする父の姿が給仕しながら見えるので安心感がある。両親が2人で住むには家が広過ぎる。私と妹は両親がいないと店ができない。助け合ってというか、お互いが『いいとこどり』をしながら、楽しませてもらっています。両親と一緒に過ごす日がまた来るとは思わなかった」とほほ笑んだ。

営業は木―日曜の午前11時―午後3時と、午後5―8時。予約不要。

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