希少な枝豆どうPR? 「農家のファンクラブ」で! 学生のアイデアがコンテスト最優秀

2023.04.30
地域観光

知財ビジネス学生アイデアコンテストで最優秀賞を獲得した学生4人と、デカンショ豆栽培農家の構井さん=兵庫県丹波篠山市今田町木津で

兵庫県丹波篠山市内の農家などが、新たな夏の特産として生産・販売している枝豆「デカンショ豆」を地域ブランド産品として育てようと、武庫川女子大学情報メディア学科の学生4人がフィールドワークを展開。「ファンクラブ」をつくり、継続的に販売促進を行うというビジネスアイデアにまとめ、このほど開かれた「知財ビジネス学生アイデアコンテスト」(近畿経済産業局主催)で最優秀賞に選ばれた。アイデアを実際に事業に生かしていくことも決まっており、学生ならではの発想力が、新たな特産の振興を後押しする。

いずれも21歳の松下奈央さん、堺柚菜さん、苅谷早紀さん、黒田あすかさん。同コンテストの「地域ブランドデザイン部門」でトップの近畿経済産業局長賞を、また、部門横断最優秀の関西みらい銀行賞を受賞した。

デカンショ豆は芳醇な香りと濃厚な甘みが特長。一大ブランドの秋の丹波黒枝豆だけでなく、夏場にも収益を生み出すため、2020年から市内の農家やJA丹波ささやま、市、県、商工会などが手を組んで、生産・販売に乗り出している。

昨年、市内で行ったフィールドワークの中で「デカンショ豆」と出合い、その味に「衝撃を受けた」という4人。「都会の居酒屋で食べる枝豆とはまったく別物でした」と振り返り、いかにこの新たな特産を売り出していくかの調査・研究をスタートさせた。

農家や県、JAなどに協力してもらったほか、さまざまなデータを基にデカンショ豆が持つ課題を検証し、「認知度の向上と広報活動が必要」と分析。また、収穫期が夏のみであることや、栽培農家がまだ少ないことなどの弱みを「希少性」という強みに変えることが重要と捉えた。

その上で、インターネットアプリを活用したファンクラブ形式のEC(販売)サイト「丹波篠山デカンショ豆スマートファンクラブ」を構想。会員は500円の入会費を払うことで、鮮度が命で、まだまだ入手ルートが限定されている希少なデカンショ豆を予約購入できる権利を持てる。年会費1000円を追加した「プレミアム」では、収穫体験やさまざまなイベントに参加できる特典を付けるというもの。

また、ネットを活用して生産者と消費者がやりとりしたり、疑似収穫体験を通して子どもたちの食育につなげたりすることも描いた。ほかに情報開示サービスとして、農薬使用量の削減や鮮度の「見える化」、栽培状況のお知らせ、配送時の位置情報追跡なども盛り込み、農家と顧客の濃いつながりを演出する。

4人は、「農家のファンクラブと銘打つことで、販売サイト感なく継続的な販売促進が望める」とする。

昨年10月には大学の文化祭で黒枝豆100袋を販売し、約2時間で完売。その際、ファンクラブについても聞き取り、もともと熱烈な丹波篠山ファンからは、「家族みんなで入会したい」「並ばずに手に入るのは魅力的」などの声があったほか、食に意識の高い人からは、「確実に手に入るのなら、値段が高くても入会したい」、子育て世代からは、「車を持っていないので、遠隔収穫体験は魅力的」などの声が寄せられた。

コンテストでは、丁寧なフィールドワークや精緻なデータ分析に基づいていることや、農家のファンクラブという新規性、実現可能性などが高く評価され、最優秀に輝いた。

デカンショ豆を生産し、学生たちのフィールドワークにも協力した「丹波篠山かまい農場」(今田町木津)の構井友洋さん(40)は、「丹波篠山の農家にとって、収益が少ない夏場を何とかしようと生産を始めた中、学生の皆さんの取り組みは非常にありがたい」と感謝し、「若者ならではの目線でのアイデアで、最優秀もすごい」と目を丸くする。

フィールドワークを行うまで丹波篠山を訪れたことがなかったという4人は、「黒豆が有名だとは聞いていたけれど、人も生活も温かい土地だと知った」と笑顔を見せる。アイデアに興味を持った企業と連携し、さらにデカンショ豆を発信することも決まっているという。

4人は、「最優秀賞には驚いたし、とてもうれしかった。卒業研究として引き続き取り組みを進めていくので、これからも丹波篠山をPRしていきたい」と意気込んでいた。

関連記事