集落で受け継がれる竹細工 手仕事光る「日用品」

2023.04.12
たんばの世間遺産地域

鹿場竹細工同好会の畑さん(左)と中川さん。慣れた手つきで竹ひごを作る=2023年3月12日午後1時41分、兵庫県丹波市春日町鹿場で

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は兵庫県丹波市春日町鹿場(かんば)地区の「竹細工」です。

同地区で家内工業として行われてきた竹細工。戦後、盛んだった頃は、集落120軒のうち、80軒ほどが携わっており、海外に輸出もされていたという。いったん途絶えていたが、17年前、中川篤朗さん(79)らが「鹿場竹細工同好会」を立ち上げ、復活させた。

中川さんは、親が作るのを見ていた世代。退職後、「技術を教えてもらえないか」と、先輩に頼んだのが、阪神タイガースが優勝した年、「鹿場猛虎会」の席だったという。ほどなく仲間に加わった畑康夫さん(88)は、中学卒業後に6年ほど、竹細工の仕事をしていた。「人間の手いうのはえらいもんでねぇ。いっぺん覚え込んだら、60年ぶりでも1週間もしよったら元通りできるようになった」

籠やざるなどさまざまな竹細工製品

主に中川さんと畑さんで籠やざるなどを編み、毎月第3土曜日に、同町の道の駅「丹波おばあちゃんの里」で開かれている手作り市に出しているほか、市内の店舗や、東京、京都などの会社から注文を受けて制作している。「工芸品でなく日用品」だそうだが、丁寧な手仕事の美しさが光る。

地元公民館で竹細工教室も開いている。定員は今のところいっぱい。竹ひご作りの難易度が高いこともあり、技術を全て習得できている後継者はまだいない。2人は「せっかく昔から続いているものなので、絶やすのはもったいない。できるなら伝承したい」と願っている。

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