「桜」保全にふるさと納税を テング巣病の処置費用に 各地で咲き誇るも「至る所で症状」

2023.05.15
地域

テング巣病にり患し、小枝が異常に密集している桜の木=兵庫県丹波篠山市内で

兵庫県丹波篠山市は、市木でもある桜を枯死の原因となる伝染病、テング巣病から守るため、ふるさと納税を通して寄付を募る取り組みをスタートした。現在、桜を守るエキスパート「桜守」の吉良勉さんをはじめとする、ささやま桜協会のメンバーや、自治会などで維持管理が行われており、市もバックアップしているが、テング巣病の処置には多額の費用がかかるため、税額控除や返礼品があるふるさと納税を活用することで、外部の人からも桜が咲き誇る景観を守る取り組みを支援してもらいたい考え。

市は4月末からふるさと納税を活用して市の事業への寄付を募る「ガバメントクラウドファンディング」をスタート。目標金額は200万円、期間は7月24日までで、事業に共感した人が、米や黒豆、地酒、牛肉などの返礼品に応じた金額を寄付する仕組み。テング巣病の処置など、桜の保護・保全費用に充てる。

 花見が楽しめる代表格、ソメイヨシノなど、市内には約5000本もの桜が植えられており、春には各地で美しく咲き誇る。ただ、特にソメイヨシノはテング巣病にかかりやすく、感染している木が多い。処置には枝の剪定が有効だが、高所作業を伴うため、業者の手を借りなければならず、処置には1本およそ1万円の費用がかかる。

市は年間50万円を協会に補助しており、各地でテング巣病にかかった桜の処置を行っている。2022年には世界的霊長類学者の故・河合雅雄氏の著書「少年動物誌」から着想を得た映画で、俳優の三浦春馬さんが子役時代に出演した映画「森の学校」のシンボルツリーのソメイヨシノ(曽地中)も感染が判明したことから、地域や三浦さんのファンの声を受け、市が費用を負担して処置が行われた。

少しずつ桜の保全を進めているものの、現在のペースでは全ての桜を守るには数十年かかるため、クラウドファンディングの活用を計画。目標を達成することで4年間分の費用を賄うことができる。

 同協会の酒井克典理事長は、「至る所でテング巣病の症状が現れており、まさに断末魔の声を上げているように感じる。正しい管理を行うことで、短命とされるソメイヨシノも長寿を保つことができる。ぜひ、桜の声を聞いていただき、ご協力を頂ければ」と話す。

事務局の市商工観光課は、「ふるさと納税を使うことで納税者にもメリットがあるので、出身者や観光で訪れ、丹波篠山の景観を気に入っておられる方に協力してもらえれば」と期待し、「制度上、市内在住の方には返礼品を贈れないが、通常の寄付はいつでもお待ちしている。ぜひ、桜に関心を持ってもらい、みんなで桜を守っていくという機運を高められたら」と話している。

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