病から再起のシェフ 移住先の田舎で腕ふるう 「お客さんの笑顔見たい」

2023.05.12
たんばのお出かけ情報丹波篠山市地域

提供を始めたパスタランチのメニューを手に、来店を歓迎する後藤さん(右)と、うめたんFUJIを営む梅谷さん=兵庫県丹波篠山市大藤で

大阪から丹波篠山市市野々へ昨年に移住したイタリアンシェフ、後藤きよみさん(56)が、同市大藤にある民宿「うめたんFUJI」の料理スタッフとして腕を振るっている。今春、地元食材を生かしたパスタランチの提供をスタート。数々の病を患ったが、丹波篠山に来てから体調が好転し、料理人として再起をかけた一歩を踏み出した。「お客さんの『おいしい』という笑顔がまた見たい。それだけ」と、来店を心待ちにしている。

メインのパスタは旬の丹波地域産食材を生かしたメニューで、2種類から選べる。シカ肉のローストなど、地元食材をふんだんに使った前菜に、丹波篠山市遠方のパン店「ヒコオキ」のパン、スープ、ドリンクが付く。

宮崎県出身の後藤さん。大阪の専門学校で料理を学んだ後、帝国ホテルで3年間修業した。大阪市内でレストランを共同経営するなどシェフ歴は約20年。「イタリアには若い頃、2年に1回は行っていた。地方によって郷土料理があるのが楽しい」と話す。

だが、料理人としての歩みに病が付きまとった。約20年前、甲状腺がんを患った。がんは治癒したものの、8年ほど前には多発性関節炎を発症。4年前には高血圧から脳梗塞になった。「何度も死にそうになった」と振り返る。

せわしない毎日を送りながらも体調に悩む中で「静かで空気の良い所へ行こう」と、田舎への移住を決心。以前からたびたび陶芸体験で足を運び、大阪のかかりつけの病院にも通える圏内にある丹波篠山市に腰を据えた。

以前は満足に調理器具を持てないぐらいの手の痛みに襲われていたが、移住後、「痛みは10分の1ほどになった」。「大阪にいるときは周りの誘惑も多く、毎日のようにお酒を飲んでいたが、今では一滴も飲まなくなった。空気が良い場所で、毎日のんびりと、ぜいたくな時間を過ごせている。ストレスから解放されたからかも」と顔をほころばせる。

一定まで体調を取り戻し、「自分の武器は料理しかない」と再起を考える中で、知人を介し、同民宿を営む梅谷美知子さん(39)と知り合った。梅谷さんがインバウンド再開に向け、食事だけをしたい人の需要にも応えたいと、事業拡大をもくろんでいたタイミングで、両者の思惑が合致。スタッフとして加わることになった。

ランチの営業時間は午前11時―午後2時。提供日は同民宿のインスタグラムで発信している。予約優先。

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