地域を見守り400年 信仰集める「延命地蔵尊」

2023.06.03
たんばの世間遺産地域

広場にひっそりとたたずむ下町延命地蔵尊=兵庫県丹波市柏原町柏原で

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は丹波市柏原町下町区自治会の「延命地蔵尊」です。

ふれあい広場にたたずむ地蔵尊。ここ数年はコロナ禍により開催を見合わせているが、8月に地蔵祭りが開かれ、住民が夏のひとときを過ごす憩いの場になる。

地域を見守る地蔵菩薩

広場内に掲げられている案内板によると、幼児の無病息災や老後の無事延命を願い、この地蔵菩薩が祭られたのは400年以上前の1617年(元和3)。現在地ではなく下町の辻に安置され、小字にちなんで「鋤先地蔵」「長砂地蔵」、親しみを込めて「辻地蔵」「えーめーじぞーさん」とも呼ばれたという。

人々の信仰を集めたが、老朽化が目立つようになったため、1821年(文政4)には地蔵菩薩を新しくし、お堂も町寄りの辻に移転。さらには1924年(大正13)、恵伝寺境内の現在地に移された。同寺は廃寺になり、現在は広場になっている。

榊賢夫氏の「歴史物語 丹波柏原」によると、太平洋戦争により地蔵祭りは自粛され、長く途絶えていた。時の流れとともにお堂は古びたが、花が供えられたり、線香の煙が立ち上っていたりしたという。88年(昭和63)には有志が発起人会を結成し、地元住民に地蔵堂の維持継承を訴えて浄財を募り、お堂の補修と地蔵尊を修復。これを機に地蔵祭りも復活した。

同寺の檀家だった男性(75)は、「昔から安置されているお地蔵さん。地元の人は大事にされていますね」と話している。

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