兵庫県丹波篠山市北新町にある国史跡・篠山城跡の南堀で、固有品種のハス「篠山城蓮」の開花が始まった。ハスの名所として知られながら2006年ごろに突如として消滅し、市民も巻き込んだ再生事業を経て19年に復活。昨秋には南堀全面を覆い、全盛期の景色が完全復活した。かつての光景がよみがえってから今夏が初の開花となる。地域住民からは、「この景色がまた見られることをずっと待っていた」「たくさんの花が咲き乱れる様子が楽しみで仕方がない」と喜びの声が上がっている。
篠山城蓮は、園芸品種と比べて花弁が少なく、大ぶりの花を付けるのが特徴。「篠山町七十五年史」には1910年(明治43)に、「南濠(堀)に蓮を植える」という記述があり、100年以上の歴史がある。
突如として消滅した後の2013年、篠山小学校の児童から復活を求める声が上がり、市職員がプロジェクトをスタート。消滅原因を調査したところ、外来種のカメ、ミシシッピアカミミガメによる食害が疑わしいことが分かった。
翌年から駆除活動を始め、15年からは市民、事業者、神戸大学の産官学民連携で「農都ささやま外来生物対策協議会」を組織した。カメは専用の捕獲わなで、23年までの10年間で計1489匹を駆除。昨年から「条件付特定外来生物」となったアカミミガメの対策において、丹波篠山市は全国でも先進地として知られるようになっている。
15年から種レンコンの植え付けを始め、19年に初めて開花。園芸品種も植えていたが、篠山城蓮を保存していた「京都花蓮研究会」の会員から種レンコンを譲り受けることができ、「本物」の復活も果たした。
カメの駆除が効果を発揮し、以降、ハスは順調に生育。21年には南堀の45%を覆い、昨年、ついに全面を覆った。かつての写真では南堀一面を覆っているため、往時の姿がよみがえった。復活の取り組みは21年、日本自然保護協会の「日本自然保護大賞」でも入選した。
市農村環境課は、「市民や専門家にも参画していただいたことで復活することができた。何よりも、最初に提案してくれた小学生たちに感謝」と言い、「引き続きモニタリングは続けるが、来年は丹波篠山国際博もあり、今後は観光面の視点も取り入れていけたら」と話している。
南堀のハスは東から西にかけて徐々に開花が進んでいく。今月下旬から8月中旬が最盛期。午後になると花弁を閉じるため、鑑賞は午前中が望ましいそう。