東京の金融マンから40歳代で農家に転身し、「丹波あさぎり農園」(兵庫県丹波市氷上町桟敷)の屋号で、楽農生活を満喫する金丸雅仁さん(60)、准子さん(62)夫妻が丹精して育てた大粒系ブドウが、収穫期を迎えている。近く、園の隣に直売所を開く。ピオーネ、ナガノパープル、シャインマスカットなどが順次並ぶ。
兵庫楽農生活センター(同県神戸市西区)の「ぶどうの学校」で栽培技術を学んだ。
一般社団法人・am*am(丹波市氷上町常楽)との農福連携や近所の人の助けで、ブドウと栗を合わせて2ヘクタールの果樹園を管理している。
ブドウは2020―22年に70アール210本を新植、約10種を栽培。うち20アール、60本が収穫可能に。昨年の3倍、5000個に袋がけをした。「今年の出来をどうこう言えるほど、経験もデータの蓄積もない」と謙遜する。
ビニールハウスの直売所「ぶどうとくりのお店」は、9月末までブドウを販売、10月以降は丹波栗を中心に販売する。
金融関係のサラリーマンをしていた40代の頃から農的暮らしに憧れ、福島県川内村に農地付き住宅を購入し、品川区と2拠点居住をしていた。東日本大震災の原発事故で継続困難になり、見つけた新天地が丹波市。2012年、70アールの農地付き住宅に、家族5人で移住した。
米と豆類で生計を立てるつもりだったが、米は大型農機を導入し、大規模経営をしなければ採算を合わすのが難しいことが分かり、果樹に注目。名高い丹波栗を自宅周りや同町井中に計1・3ヘクタール新植。次いでブドウを植えた。水稲も増え、経営面積は全体で6・5ヘクタール。
二人は、自分たち、地元の人、都市部からの買い物客らが交流する「開かれた農園」を目指している。
新規就農から12年、雅仁さんは今年、認定農業者に。「何とか完成形に近づいてきた。都心にいてはできないことができる。良い所に来た」と喜ぶ。准子さんは「ドッグラン付き農家民宿も準備中。ソフト面がなかなか。いつオープンできるかな」とほほ笑んだ。