酒蔵が「有機JAS」取得 環境配慮の純米酒発売 伝統農業を国内外へ発信

2025.01.28
丹波市地域注目

有機米を使い、プリント瓶を採用した環境に優しい新商品「奥丹波 有機純米酒」を持つ山名さん=兵庫県丹波市市島町上田で

有機米を使った酒造りに長年取り組む山名酒造(兵庫県丹波市市島町上田)が、生産された食品が農薬などの化学物質に頼っていないことを認める国家規格「有機JAS」の認証を受けた。同酒造によると、有機JAS認証を持つ酒蔵は全国で10軒程度と珍しい。今月、原料に有機米を100%使い、ラベルが不要のプリント瓶を採用し、認証マークを貼るなど、多角的な視点から環境に配慮した日本酒を発売した。12代目蔵元の山名洋一朗さん(34)は「マークが付くことでより多くの人に安心な日本酒を届けられる。有機農業に注力する丹波市を周知するきっかけにもなれば」と期待する。

同酒造は、有機農業の先進地として「有機の里」と呼ばれる市島町をアピールしようと、約30年前から有機米を使った酒造りを展開。有機米を使った日本酒を「自然酒」シリーズとして売り出しており、オーガニック食品が浸透する海外で特に需要がある。

2022年、酒類に有機JASマークが付けられるようになった法改正を機に、認証取得に向けた準備を始めた。酒蔵で使用する洗浄剤や、ネズミの侵入を防ぐ薬剤を見直したり、関東で研修を受けたりした。

認証取得を機に発売したのが「奥丹波 有機純米酒」。市内を中心に、有機JAS認証を受けた農家から仕入れた「五百万石」「山田錦」といった酒米を使用。山名さんは「柔らかい甘みと、山名酒造らしい『すぱっ』とした切れ味がある。アルコール度数も14度と低めで、万人受けする酒」とPRする。

今回初めて黒い瓶の表面に「丹波の自然の波」をイメージした白の模様をプリント。ラベルをなくすことで、廃棄や人手にかかるコストを削減した。一般的な酒瓶より高さが低いため、小さな段ボールに梱包しやすく、配送業者の輸送効率向上にもつながるという。

今後、海外で定番化している自然酒シリーズも残しながら、有機純米酒の生産量を増やす。山名さんは「マークがあることで、誰の目から見ても安心してお酒を買っていただける」と期待。「ものづくりは何を入れるかだけでなく、何を入れないかでも個性が出る。農産物作りも酒造りもそう。伝統ある酒蔵として、農薬も化学肥料も使わない昔の『当たり前の農業』を復興させ、この場所でしかできない『メイドイン丹波』の酒を国内外に発信していきたい」と力を込める。

720ミリリットルで1650円。2月中旬まで丹波地域限定で、火入れしていない生酒を先行販売している。同地域外でも、4月ごろから火入れした酒を販売する。

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