NPO法人かたくりが運営する就労継続支援B型事業所「きらめきワーク」(兵庫県丹波市柏原町柏原、20人)が、同市内の農家との農福連携を深化させている。農作業の受託だけでなく、市内の農産物を仕入れてオリジナル菓子を作るほか、スイーツの受託製造も担っている。利用者のやりがいや収入増になり、農家も助かるWIN―WIN(ウィンウィン)の関係が生まれている。
新型コロナ禍の2022年、農作業を受託していた農業会社から農産物の加工を打診されたのがきっかけ。同施設の隣にあった、JA丹波ひかみが所有していたみそ加工場を購入し、加工施設を整備。菓子製造と密封包装食品製造業の営業許可を取得した。
ちょうどコロナ禍で内職仕事が減り、生き残りを懸けて仕事を探していた時期で、利用者の工賃アップを目指し、農作業受託と農産物加工に注力することにした。
現在、直営で製造する菓子は、農作業を受託している宮垣農産(同市氷上町鴨内)から仕入れる特別栽培米の米粉を使ったマフィン(330円)と、たまきファーム(同市青垣町西芦田)から仕入れたレモンを使ったジャム(700円)。今春、丹波大納言小豆を使ったプリンを新発売する予定で、開発を進めている。ニンジンペーストも商品ラインナップに加える予定。
同施設で加工ができることを知った市内の農業生産会社から米粉マフィンの受託製造もしている。
農作業は現在、8生産者から受託。畑の草引き、マルチはがし、小豆の刈り残しの収穫、栗拾い、ニンニク栽培の手伝いなどを担い、生産者の労働力不足を補っている。
米粉マフィンは、福祉イベントでの直売と月1回の注文販売だったが、昨秋から道の駅あおがき(同市青垣町西芦田)、年明けから氷上PA丹波いっぷく茶屋(同市氷上町市辺)で一般販売を始めた。毎週水曜に配達する。プレーン、チョコチップ、バターナッツカボチャ、カボチャの4種類。注文販売分は毎月、味を変えている。
自社製品が多くの人の目に触れ、売れることで施設の宣伝になり、OEM(委託者ブランド名製造)の依頼が増えることを期待している。
担当職員の上田貴美子さんは「利用者と一緒に楽しく作業し、いろんなスキルを身に付け、依頼に応えられる加工場になれば」と言う。
農作業と加工の両方に従事する利用者(25)は「家でいろんな米粉を使ってマフィンを焼いたけれど、宮垣さんの米粉を使う、きらめきワークのマフィンが一番おいしい」と言い、農作業は「自分ができることが増えてうれしい。暑い夏より、冬の方がいい」と笑顔で話した。
農作業を委託し、加工所づくりの助言をした宮垣美絵子さん(宮垣農産)は、「助かる、と口コミで農作業を頼む農家が増えてきた」と言い、「自分の農産物で加工品を作りたい生産者が悩むのはロット。小ロットで加工委託ができ、使い勝手が良い。きらめきワークと組んで6次産業化し、加工で付加価値のある商品をマルシェで売れば、お互いメリットがある」と利点を説く。