兵庫県丹波篠山市味間奥の株式会社アグリヘルシーファームの食育部門「アグリヘルシーフード」が中高生スポーツクラブや学校の練習前後に自社栽培の米で作ったおにぎりを配達したり、食育講座や農業体験を提供する事業を展開している。昨年4月にスタート。いずれもサッカーの中学クラブ4チームと、3高校の部活動で実施しており、提供先を広めつつある。
このほど7カ所目の提供先となる三田学園高校(同県三田市)グラウンドに配達に向かったのは同社社員で、ドイツのサッカープロリーグでプレーしたことのある矢澤貴文さん(33)。練習前後に1個ずつ、計148個のおにぎりを届けた。選手たちは「ありがとうございます」とお礼を言って、ちりめんじゃこと、同社で採れたダイコン菜入りのおにぎりをほおばった後、ハードな練習に向かった。練習後は鶏むね肉とゴボウ入りのおにぎりを味わった。
同社は、原智宏社長(46)が元ガンバ大阪ユース(高校年代)の選手だったことや、社員の中に元サッカー選手や指導者が多く、サッカー関係者の話を聞く中で食べ盛りの中高生の練習前後の補食が十分でないことを感じていた。また、自社栽培の米の販売網拡大のため、昨年3月にスポーツ大会でキッチンカーでおにぎりの販売を始めた。
キッチンカーでは販売量が読めず、残飯も発生するため、クラブチームや学校と契約しようと同事業を計画。中学クラブチーム「フレスカ神戸」(神戸市西区)からスタート。現在、県内強豪の三田松聖(三田市)、神戸星城(神戸市須磨区)の両高校のほか、宝塚市と西宮市の中学クラブチームにいずれも週2回、配達している。
おにぎりの米は、丹波篠山産コシヒカリ。メニューは県サッカー協会医科学委員も務める栄養士が監修。練習前は消化が良い具材で、練習後は黒枝豆や鶏のムネ肉などたんぱく質を摂取できるようにし、選手が飽きないよう、具材や、白飯の味付けなどに変化を持たせている。また、栄養士が毎回、選手たちに食や健康について関心を持ってもらえるよう、栄養や健康についてのコメントを添えている。
ジュニアサッカーのコーチも務める前田雅弘常務によると、練習前後の補食はコーチが指導するが、実際は選手任せになることが多く、適当なものを確実に補食しているかどうかが分からないことがある。体に良いものを確実
に食べられる同事業のメリットは大きいという。三田学園高校の福島康太監督(31)は「体作りには補食は必要。練習時にもうひと頑張りでき、練習効率が良くなる。おにぎりのサイズ感もいい」と導入の経緯を話す。同校選手でこれまで練習後は栄養補助食品を食べていたという、丹南中出身の肥田夢陽さん(FCうりぼう―パスィーノ伊丹出身)は「おにぎりはむっちゃおいしい。体作りに役立つ」と喜んでいた。
同事業は、おにぎりの配達と農業体験、食育講座をセットにし、年間契約している。子どもたちに同社ほ場での農業体験などを通じて、食や農業の大切さ、丹波篠山の魅力などを伝えていくという。
配達先を募集しており、県内や大阪方面、サッカー以外のスポーツクラブなどに広げていきたいという。