兵庫県丹波篠山市立味間小学校で、4年生(105人)の保護者が同学年の児童に自分の職業を紹介する「わたしの仕事紹介タイム」が行われた。総合学習の一つで、「職業」について学ぼうと企画。延べ4日間実施し、計13人の保護者が来校した。仕事のやりがいについては、いずれも「『ありがとう』と言われたとき」を挙げ、児童たちは仕事の意義を学び、「ありがとう」の意味の大切さを改めて感じていた。
それぞれが仕事の内容、その仕事に就くきっかけ、児童へのメッセージなどを話した。
最終日は5人が来校。病院で情報システムに携わっている長野全征さんは、同県西宮市に住んでいた学生の時、国家公務員に合格していたが、阪神淡路大震災の被災状況を見て、「自分は何もできなかった。自分にできることは」と医療業界に進むことを決意。医療現場で「ありがとうの言葉は人間にとってのエネルギー。両親にも言ってあげて」と伝えた。
丹波市消防本部の救急救命士、石橋智也さんは、中学生の時、親しかったおじが37歳で亡くなり、「人の命は簡単になくなる。命を助けたい」と、今の職を志したきっかけを話した。心肺停止状態の患者に複数の人と連係して心肺蘇生法を施し、一命を取り留めた経験を紹介。感謝の気持ちを記した患者からの手紙を読み、「感謝の言葉で次も頑張ろうという気持ちになる」と話した。
部材全てが日本製の財布のブランド会社を経営している畑鮎香さんは、ブランドを立ち上げる経緯や日本の素晴らしさなどを説明。「世の中にある物のデザインは、全て誰かの頭の中にあったもの」と、創造的な仕事の意義を紹介した。また、イソップ寓話「3人のレンガ職人」を紹介し、仕事に対する心の持ちようの重要さを話した。
警察官の古杉悠次さんは、柔道と空手の経験者で、大学の専攻が法学部だったことを職業選択の理由に挙げた。「長時間緊張する状態をいとわない体力が必要」と仕事の大変さを強調。児童から犯人を逮捕したときの気持ちを問われ、「再犯しないよう心に響く言葉で、一人の人間対人間として接するようにしている」と答えた。
感染管理認定看護師の若狭征一郎さんは、幼少の頃、病気で入退院を繰り返していた母親と面会する際に優しい看護師に出会い、「病気を治す力を支えたい」と医療を志したきっかけを話し、「君たちの未来の可能性は無限大。今の好きなこと、わくわくすることを大切にしてほしい」とメッセージを送った。
児童の安松夏輝さんは「仕事のイメージが少し分かった」、浜中結衣さんは「どんな仕事にもそれぞれのやりがいがあることが分かった」と感想を話していた。
他の日には、ディズニーランドの元キャストや鉄道の運転士、歯科衛生士などの紹介があった。制服のある仕事は着用して説明。仕事で使用している用具を児童に触れさせる一こまもあった。「自分の子どもに家ではなかなかできない、仕事のことを話したり、制服姿を見せたりする良い機会になった」と喜ぶ保護者もいた。