兵庫県丹波市氷上町出身の高校教頭、里知純さん(52)=同県明石市=と、木彫作家の佳孝さん(47)=神奈川県湯河原町=の初めての兄弟展「これまでのかたち それぞれの視座」が、植野記念美術館(丹波市氷上町西中)で16日まで開かれている。兄は平面と立体、弟は木彫を出展。使う素材もテーマも作風も異なる二人の作品を比較して楽しめる。今展覧会のために作った新作もある。無料。
知純さんは京都市立芸大彫刻専攻卒、県立高校の美術教師として勤務する傍ら制作を続け、作品発表を続けてきた。郷里での作品展は初めて。平面と立体計約30点を出展している。「先に作りたいもの、テーマを決めてから素材を選ぶ」と言い、現代美術寄り。繊維強化プラスチック(FRP)や鉛を使ったオブジェや昨年1月の日記など、多様な作品が並ぶ。
近年、力を入れているフェルトで無数のイチョウを作った「思い出1984」は、今展覧会のために制作。母校の東小学校の旧講堂裏手にあったイチョウの思い出を作品で表現した。「丹波市で過ごした子どもの頃の思い出がモチーフになっている作品もある。生まれた場所で見てもらえるのはうれしい」と話す。
佳孝さんは東京藝大工芸科卒、同大学院木工芸専攻修了後、作家活動を続けている。主にクスノキを使った木彫と、大学の卒業制作「昨日、今日、明日」(鍛金)を展示。1本のケヤキから彫り出した新作「ノマド」、山に囲まれた故郷の雰囲気から着想した「山麓の家」(2023年)なども出展している。郷里展は、2019年に丹波新聞社で開いて以来。
「自然を題材にすることが多く、この年齢まで制作を続けていると、若い頃は田舎で嫌だなと思っていたこの辺りの盆地や山の雰囲気をモチーフにした作品が出てくる」と、田舎の自然の感じ方の変化を話す。
5歳離れており、これまで一緒に何かをしたことはなかったが、「意識はしていないけれど、何となく影響は受けていたと思う」と佳孝さん。兄弟展は「気恥ずかしさがあったが、展示準備中にゆっくり話をし、真面目そうに見えて面白いことを考えている、ユーモアがあると感じた」と知らなかった兄の一面に触れた。知純さんは「この年齢になり、携わっている美術で一緒に作品展ができるのは、感慨深い」と静かに喜びを語った。
二人が中学生時代に描いた水彩画の写生作品も1点ずつ展示している。
市出身作家の芸術創作活動を紹介する「UEBI ART(うえびあーと)展」の6回目。