兵庫県丹波市山南町太田の中西剛三(こうぞう)さん(55)・真弓さん(43)夫妻が、手打ち麺のセルフうどん店「ゑにちうどん」を自宅横にオープンした。讃岐うどんの本場、香川県の名店で修業した剛三さんが、現地から取り寄せるいりこを使って作る本格だしが一番の売り。店はモミジの名所、慧日(えにち)寺のすぐ近くにあり、中西さん夫妻は「慧日寺の盛り上げにも一役買えればうれしい」と話している。
だしを取るいりこは、香川県観音寺(かんおんじ)市、伊吹島産の「伊吹いりこ」(カタクチイワシの煮干し)。讃岐うどんのだしに欠かせない最高級のいりことして知られるという。剛三さんは「いりこを感じられるだしをぜひ味わってほしい」と話す。麺は、こしが強い太麺で、1日がかりで作る。
約20年間、大型トラックの運転手をしていた剛三さん。「店を持つ」という夢にチャレンジしようと、仕事で四国を訪れた際によく食べに行っていた、観音寺市にあるお気に入りのうどん店に思い切って修業を申し込み、会社を退職した。すぐに丹波市商工会の起業塾に参加しながら、昨年7月から修業をスタート。近くにアパートを借りて約3カ月、働きながら技術を教わった。修業中は、釜の熱気で何度も熱中症になるなど体力的にハードだったが、「うどんを習いたい一心」で乗り越えたという。
また、早くに亡くなった父は桧皮(ひわだ)ぶきの職人で、慧日寺のお堂の屋根をふいたことや、先代住職の頃から家族ぐるみで世話になったという思いから、同寺に深い思い入れがあり、店名は「ゑにちうどん」に決めていた。同寺を訪れた観光客から「食事ができる所はないか」と尋ねられることがあるものの、周辺には飲食店がなかったため、剛三さんは「うどん店を開けば力になれないか」とも考えたという。昨秋の「丹波もみじめぐり」期間中に、同寺で出張販売を行ったところ、好評だった。
店のうどんは、修業先と同じくセルフ方式で提供する。持ち手が付いた深型のざる(てぼ)に麺を移し、自分で湯通しする。だしはサーバーで好きなだけ入れ、無料トッピングのネギ、ショウガ、天かすなどをのせる。
かけうどんのみでスタート。小1玉(250グラム)600円、中2玉750円、大3玉900円。夏はぶっかけうどんを提供予定。一品の天ぷらは真弓さんの担当で、えび天、鶏むね、レンコン、白ネギなど、多種類を用意する。
二人は「プレオープンでは、自分でゆでるのが楽しいと言ってくれる子どもさんもいた。気軽に来てほしい」と笑顔で話している。
火曜定休。営業時間は午前10時半―午後2時半。