多紀連山には特異なシダ生育 篠山の気になる生き物紹介 博物館研究員が講演

2025.03.12
丹波篠山市地域自然

シダを中心に丹波篠山の自然について語る、ひとはくの鈴木研究員=兵庫県丹波篠山市瀬利で

兵庫県丹波篠山市の多紀連山のクリンソウを守る会(細見隆夫会長)が、みたけ会館で講演会「篠山の気になる生き物」を開いた。講師は、人と自然の博物館(ひとはく)の研究員で、シダ植物が専門の鈴木武さん(62)が務め、シダの話を中心にタンポポやネズミの話を披露。多紀連山には他地域ではあまり見られないシダ植物が生育しているなどとし、丹波篠山の自然の奥深さを伝えた。約35人が興味深げに耳を傾けた。

鈴木さんは、世界で約1万種、国内で734種、兵庫県内で284種のシダ植物を確認していることを紹介。マツバラン類、ヒカゲノカズラ類、トクサ類、シダ類の4群に大別できるとした上で、「たくさんの種類があるが、20―30種を覚えると、どの仲間なのかという系統が分かるようになる」と話した。

多紀連山には県内の他地域では見られない特異的なシダ植物が生育していることに言及し、その理由を、多紀連山を形成する地層が超丹波帯と呼ぶ硬い岩盤からできているため、谷間が狭いことから「水はけは良いが湿度が高いというシダが好む環境にある」と説明。全国で30カ所ほど、県内では多紀連山でしか確認のないヒメムカゴシダが自生していることや、昨年、ナカミシシランが発見されたことなどを報告した。

さらには、どこにでも見られるノキシノブが、近年、発展が著しいDNA解析によってノキシノブ、クロノキシノブ、フジノキシノブ、タジマノキシノブ(論文作成中のため仮称)の4種に分かれたことや、丹波篠山にはクロノキシノブが多いことなどを報告した。

また、1904年にイギリス人冒険家リチャード=ゴードン・スミスが六甲山で採取し、新種登録されたスミスネズミについても解説。「日本固有種でありながら、外国人の名前が付いているのはこのため。体長約10センチ、体重約30グラム、耳が小さく、尾が短い、ずんぐりむっくりでハタネズミに似る」とし、「豊かな森の林床で生育し、主に植物を食べる。2006年に久しぶりに六甲山で見つかっているが、丹波篠山では未記録。わなを仕掛けて生息状況を調査したい」と協力を呼びかけていた。

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