PTA改革から2年 ある小学校のその後は? 負担減も「無関心」増を懸念

2025.03.13
地域注目

全員そろっての会は今年度3回目というPTO役員ら=兵庫県丹波篠山市東浜谷で

まもなく新年度がスタート―。各学校では新学期を前に、PTAの新役員選出などが進んでいることだろう。近年、役員や活動に負担を感じる保護者が多く、全国を見渡せば「解散」を選択する組織もある。そんな中、兵庫県丹波篠山市立岡野小学校・幼稚園の保護者らは2年前、「ボランティア組織」であることに立ち返り、加入・非加入を選択制にしたり、活動も大幅に見直したりするなどの改革を断行。名前も「応援団」の意味を込めて「PTO」に改めた。その後、PTOはどうなっているのか。

「従来のPTAのすべてを否定するつもりはないけれど、保護者からは『最高』と言われます」(PTO役員)―。ただ、自由な組織になった一方で、“無関心層”が増え始めているという新たな課題も浮上しているという。

2月某日の午後7時、岡野小のミーティングルームに本部役員の5人が集った。聞けば、「飲み会を合わせて3回目の会議」とのこと。普段はスマートフォンなどでやり取りしているだけという。「昔のPTAなら毎月、夜に各部会が会議をしていた。それがなくなって、保護者からはとても喜ばれています」

◆加入・非加入、選べるように

PTOは、PTAが任意のボランティア団体にもかかわらず、半ば自動的に加入していることを疑問視。保護者だけでなく、教職員も含めて加入、非加入を選べるようにした。

また、▽広報部▽地域部▽安全部▽事業部▽6年生企画部―を置いているが、全てエントリー制で、誰も手が上がらなければ置かない年もある。実際、今年は安全部と6年生企画部、広報部のみ。他の部はPTO本部の役員が兼務しているが、無理をしないため、ほぼ負担はないという。ちなみに学級委員も募集制だ。

人数が必要な事業を行う際には、連絡用のアプリを使って「ボランティア」として全保護者に参加を呼びかけ、人数が集まれば実施し、集まらなければ割り切って実施しないという方針を掲げる。

「会長は6年生の保護者から」という暗黙のルールも、「1年だけの活動では改革に取り組むのは難しい」と撤廃。2年前、当時4年生の保護者だった上本浩之さんが会長を務め、現在も継続している。6年生の保護者には新設した6年生企画部で最終学年の思い出作りに専念してもらっている。

会費はこれまで年間3000円だったが、繰越金があったため2000円に引き下げた。また、保護者以外の住民や団体にも「賛助会員」(1口500円)を募った。

支出の見直しや役員負担の減少を考え、市PTA協議会からも脱退した。

◆入会率減少も、賛助会員100口

改革1年目、保護者の入会率はおよそ8割。2年目は53%程度にまで減っていた。教諭の加入も半分程度という。

会費減にはつながっているが、加入・非加入を選べるようにしたことで、会費の意義はより「寄付」の色合いが強くなった。「だからこそ、無駄なことには使わず、子どもたちと学校のために大切に使わないといけない」(上本さん)。

一方、新たに募った地域からの賛助会費が約100口、5万円程度集まっており、地域が活動を支えている面もある。

ただ、「どうしてもやりたい事業が出てくれば、新たに寄付を募る。寄付が集まらなければ実施しない」というスタンスを取っており、誰かの負担が増える体制にはしていない。

◆「無理をしない」目玉事業は2つ

今年度、目玉だった取り組みは、2年前から行っていた夏休み中のプール事業。監視員などの当番が保護者の負担になっていた一方で、子どもたちからは希望する声があったことから、校区内にあるユニトピアささやまの協力を得て施設のプールを活用。施設専属の監視員が配置されているため保護者の負担もなく、利用した子どもたちの使用料は後日、PTOが負担する仕組みを取った。

ただ、同施設のプールは昨夏で営業を終了。他の場所を探すことはせず、今夏は行わないという。ここにも「無理をしない」という考えを落とし込んでいる。

学校の美化作業はアプリで全保護者に参加を呼びかけて実施した。

「事業らしい事業は、この2つくらいかな」

◆参加を促す「企画力」課題に

どの改革においても貫いている考え方は、「そもそもボランティア」ということ。「災害時のボランティアでもそうだが、嫌々行く人はいないでしょう」(同)

これまでにも小学校や中学校でPTA役員を務めてきた副会長の森本良太さんは、「これまで、新役員を決める保護者会は沈黙の場。口を開けば『できない理由』を言い合う時だった」とため息を漏らし、「あと何回、このようなことを我慢すればいいのかと思っていたが、ようやく変われた」と笑顔を見せる。

ただ、2年間取り組んでみたことで生まれた懸念もある。「自由」が広がった一方で、「無関心が増えているのではないか」ということだという。

美化作業は少しずつ参加率が減っている。もちろん自由参加だが、役員らは、「自分の子どもたちが通っている学校をきれいにしようという思いは持ってほしい」と願う。

上本さんは、「予想はしていたが、任意が無関心に結びついている気配を感じる。保護者負担は確実に減ったが、学校や子どもたちのことに関心をなくしてしまうのは違うと思う」と言い、「そこは執行部の企画力に課題がある。参加したくなるような空気づくりが必要になる」と話す。

負担を完全にゼロにしようとすれば、行きつく先は解散があるかもしれない。しかし、役員らは、従来の形ではなくとも「地域と学校、保護者の一体感を演出し、橋渡しになる組織は必要」と考えている。

「今はいったん、これまでの取り組みを壊して平らにした状態。ずっとこのままで良いかというと、そうでもないように思う。個人の負担は徹底的に少なくしつつ、子どもたちや地域のために有意義な団体とは何かを考え続けている」

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