兵庫県丹波市柏原町田路にあるコーヒー専門店「焙煎所 豆labo(ラボ)」がこのほどリニューアルオープン。自慢のスペシャルティーコーヒーのほか、抹茶ラテなども追加し、より親しみやすいドリンクメニューに一新、ピザやスイーツも充実させた。新メニューに入った「アーモンドオレ」は、かつて柏原商店街で40年にわたって愛されながらも3年前に閉店した喫茶店「でんでん夢詩」で提供されていた一品。同店主の娘で、3月から店長を務める田淵華子さん(33)が〝復刻〟させた。地域に愛された店の味と、込められた思いを受け継ぐ。
温めたミルクに「でんでん夢詩」時代と同じアーモンドパウダーを入れ、ホイップクリームとアーモンドスライスを乗せて提供。田淵さんは、「当時から知る人ぞ知るメニュー。甘いけれど嫌な甘さではない。合間に一度こして、ひと手間をかけることでおいしくなる」とほほ笑む。
かつて同商店街で銭湯を営んでいた田淵さんの祖父が43年前、家庭に風呂が普及したことを機に業態転換し、喫茶店を開業。店名は、ゆっくり動くデンデンムシにかけて、「ゆったりと過ごしてほしい」「自分たちも夢を抱きながらゆっくり前に進む」という思いを込めたという。
田淵さんは幼い頃から喫茶店に出た。「あいさつをしないと店に出てはいけない」というルールを守り、常連ともすぐに顔なじみに。コーヒーなどを飲みながらくつろぐ人たちを見上げるのが日課だった。
父が店を継いでからはカウンターに入って切り盛りもし、生まれたばかりのわが子を背負って働いたこともあった。
創業40年を迎えた3年前、コロナ禍などの影響もあって閉店。店舗は現在、内装や食器などを引き継いだ喫茶店「アリエッタ」になっている。
田淵さんは、「いつかは自分も喫茶店を」という夢を秘め、実家以外の店で修業したい気持ちもあったが、育児などもあってなかなかできなかった。
そんな折、整骨院やエステ、サウナ事業を行い、豆ラボも運営する「フィジカル・アイ」の足立勲代表(44)が、店のリニューアルを目指すタイミングで応募してきた田淵さんを店長に採用。そこで初めて、でんでん夢詩の店主の娘ということを知り、「地域に愛された店。おこがましいかもしれないけれど、その味と思いを引き継げたら」と、メニューの復刻を提案した。
リニューアルオープンの日は4月30日。足立代表の誕生日であり、3年前にでんでん夢詩が閉店した日。「運命を感じた」(二人)と話す。
「でんでん夢詩は父の店だけれど、私のルーツでもある。アーモンドオレと思いを引き継ぐことが親孝行になればうれしい」と言い、「入りやすくて、『来て良かった』と思ってもらえる店にしたい。それこそ、でんでん夢詩のようなアットホームな雰囲気で」とほほ笑んでいる。
アーモンドオレは当時と同じ520円で提供。営業時間は午前10時―午後5時。月、木曜・祝日休み。日曜は午前11時―午後4時。