両親と共に32年営業してきた理容店が2月に全焼し、店舗を失った兵庫県丹波市山南町のサカイヘアーサロンの酒井泰成代表(49)が、発達障がい児向け訪問理容に力を注いでいる。事業を継続しつつ、店舗を再建し、再起を図る。
理容師法で、高齢者、寝たきりの人、施設利用者、障がい者に訪問理容ができる。酒井さんは、障がい者施設の訪問理容を27年続けるなど、経験豊富。京都市のNPO法人「そらいろプロジェクト京都」が提唱する、発達障がいなどを理由に理美容室でカットできない子どもらがサロンでカットできるようにトレーニングする「スマイルカット」に加盟している。
じっと座っているのが難しい子を受け入れるサロンは多くなく、丹波市内外に顧客がいる。店で散髪できるよう慣らす導入で出張カットをしており、無店舗となったため、顧客宅を訪ねている。
同店を小学4年から利用している、高校3年生の男子がこのほど、火災後初めて訪問理容を受けた。普段と違う環境でやや緊張しながら、最後まで座ってカットを終えた。
母親は「散髪、歯科医院、医院は理解のある所でないと難しい。酒井さんは勝手が分かっているので安心」と喜んでいた。
酒井さんは「失ったものは大きいけれど、前向きに取り組むしかない。今できるのは出張だけ」と、腕一本、技術一つでサービス提供を続ける。
カット代と別に訪問料金が市内1000円、市外2000円必要。