持ち帰りOKの「子授け地蔵」 10カ月ぶりに帰宅 コウノトリも飛来し村人仰天

2025.05.01
地域注目

10カ月ぶりに祠に戻ってきた子授け地蔵。真新しい赤い前掛けが着けられていた=兵庫県丹波篠山市川原で

子授けの御利益があるとされ、自宅に持ち帰って願い通り子を授かれば元の場所に戻すという“暗黙のルール”がある兵庫県丹波篠山市川原の「子授け地蔵」。昨年6月から、近年では2度目の〝出張〟に出ていたが、このほど無事、祠に戻った。10カ月ぶりの〝帰宅〟に、「誰かの願いがかなったかもしれない」と住民らは大喜び。さらに、帰宅翌日には祠の前の水田に2羽のコウノトリが飛来。赤ちゃんや幸せを運ぶとされる鳥の出現に、誰もが「こんなにめでたいことはない」と目を丸くし、〝奇跡の組み合わせ〟に仰天していた。

近くで暮らす森田忠さん(73)が、祠に地蔵が戻っているのに気づいた。手紙などはなく、御利益があったかどうかは今回も不明だが、真新しい赤い前掛けが着けられていた。

住民らが喜んでいると、翌日には2羽のコウノトリが飛来。森田さんは、「コウノトリが、持ち帰った人の所に赤ちゃんを届け、今度は地蔵をもとの場所に運んできたのかもしれない」と笑う。

一報を受けた記者が現場に到着した際には1羽しかいなかったが、足環から鳥取県八頭町内で孵化した「J0484」(雄、3歳)と分かった。

地蔵の帰宅とコウノトリの飛来を知った住民からは、「良かった」「赤ちゃんできたのかもしれんなあ」「ええことが起きそうや」と喜びの声が広がり、前回戻ってきた際に供えられた物の中にコウノトリグッズがあったことから、「こんな奇跡みたいなことあるか?」と驚く人もいた。

地蔵が帰宅した翌日、祠(左奥)の前に飛来したコウノトリ

森田さんは、「時折、祠の前に止まる車を見かける。他にも持ち帰りたい人がいるよう」と話す。帰宅を報じることで、また姿を消す可能性もあるが、住民らは、「それがこのお地蔵さんの仕事やから、それでええねん」と優しい笑顔を浮かべていた。

2020年11月、本紙が「持ち帰りOK地蔵」と報じたところ、翌21年春、数十年ぶりに姿を消した。〝返却期限〟はないものの、2年が過ぎても戻らかったため、「あまりに長くおられないのは寂しい」と感じた住民らは、「一度お返し下さい」と看板を立てて呼びかけた。すると昨年5月、3年ぶりにもとの場所に戻った。

この時、地蔵と共にたくさんのさい銭や菓子、赤ちゃんのよだれかけ、赤ちゃんを運ぶとされるコウノトリ関連のグッズなどが供えられていた。手紙などはなく、御利益があったかは分からない。本紙が地蔵の帰宅を報じたところ、1カ月後の昨年6月、再び姿を消していた。

川原の子授け地蔵  赤い前掛けなどが施された高さ40㌢ほどで、顔などはなく、見た目は普通の石。この地蔵のことが記された史料はなく、住民の間で脈々と「ご利益がある」と伝えられてきた。一方、ご利益が本当にあるのかどうかは不明。その理由は、▽持ち帰るときは誰にも言わなくていい▽「誰だったのか」などと詮索しない―という習わしが伝わることから、持ち帰った結果がどうだったのかという話すらないためという。

昨年5月に戻ってきた時の様子。たくさんの菓子やグッズが供えられていた

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