兵庫県立柏原高校地域科学探究科の2年生で、今年度から「教科横断型探究」の授業が始まった。3年生の1学期まで計36時間をかけ、「愛を探そう」のテーマで毎回、2教科の教諭が“コラボ”して授業にあたる。学習指導要領の「総合的な探究の時間」の一環。教科をまたいだ内容で定期的に授業を行うのは先進的な取り組みという。
教科横断型探究の授業では▽家族愛▽自然愛▽友情▽恋愛―の4つの愛を、古代、近世、近現代、現代のそれぞれの背景で探っていく。
4月25日と5月2日の授業では「地歴・公民」と「家庭」がコラボ。「古代史における家族愛」のカテゴリーで、貴族と庶民、それぞれの暮らしについて学びながら「家族愛」を探った。
地歴・公民は原孝拓教諭、家庭は吉竹美津子教諭が担当。前半を原教諭が受け持ち、後半は吉竹教諭にバトンタッチする形で進めた。吉竹教諭は主に食の観点から家族愛を探った。いずれも教科単体で行う授業よりも踏み込んだ内容になっており、授業を受けた生徒は「平安時代の貴族の結婚は今とは全然違っていた。いろんな教科と連携して、これからどんな“愛”が学べるか楽しみ」と話した。
「普通科改革」で誕生した新学科
「地域科学探究科」は、普通科に特色を持たせる国の「普通科改革」に伴い、昨年度、同校に出来た新学科。2年生は同科1期生にあたる。
新学科設立にあたり、2023年度に「研究推進部」を設置。教員4人と地域のコーディーネーター2人の体制で「探究」の進め方を議論した。
普通科は通常、「探究(総合的な探究の時間)」が3年間で3単位だが、地域科学探究科は7単位。うち2、3年生での各1単位を「地域横断型探究」で取得する。後の5単位は、それぞれが個人的なテーマで取り組む探究「丹BAL」で取得する。
“特進クラス”の位置づけ変えず
地域科学探究科が難関大学進学を目指す“特進クラス”という位置づけは変えていない。「探究」の増加により、5教科に充てる時間数は減るが、大学入試も、正解の見えない課題を解決する力が求められる時代。同校は教科横断型探究に取り組むことで、教科の枠を越えて知識と知識をつなぎ、“ネットワーク化”できる力を育てたいとしている。
同校研究推進部の尾花尚史部長は「『教える』教科ではなく、テキストもない。どんな授業になるか、教員にも分からないが、それもまたこの教科の良さなのではないか」と言う。
また、同校評議員も務める兵庫教育大学の安藤福光准教授は「いろいろなハードルがあり、高校で教科横断型の授業を行うのは難しいとされている。1年以上かけて定期的に授業をやっているのはあまり聞いたことがなく、注目している」と話していた。