教育や研究に3Dデータ公開 世界的サイトで日本最多数 出土物など細部まで観察

2025.05.17
丹波市地域地域歴史注目

ろくろに出土品を載せて写真を撮影する西岡さん=兵庫県丹波市山南町谷川で

遺跡の出土物や動物のはく製、フィギュアなど、あらゆるものを立体的(3Dモデル)に見ることができる世界的な共有サイト「Sketchfab(スケッチファブ)」に、兵庫県丹波市資料館の収蔵品が106点掲載されており、日本の文化財担当部局が公開している数としては日本最多になりました―。オンライン上で3Dモデルを360度、細部まで観察できるもので、市が開いた記者向けの定例会見で発表された。「これは、すごいことなんやろか」「読者に伝えるにはマニアック過ぎへんか」―。心の中でつぶやきつつ取材を進めると、文化財担当職員の静かなる努力と、熱い思いを知ることになった。

スケッチファブは、海外企業が運営し、閲覧は無料。オンライン上で、普段は手に取って観察できない出土品などの裏側や内部をじっくり観察することができる。文化財にとどまらず、DIYのパーツなど、あらゆるものの3Dデータが公開されている。

市教育委員会社会教育・文化財課は、市内遺跡で出土した須恵器や平安時代の鏡、明治時代の歯ブラシ、イノシシのはく製、黒井城跡などの3Dデータを公開している。

同課の学芸員、西岡真理さん(37)が担当。陶芸用のろくろの上に対象物を置き、20度ずつ回転させつつ、あらゆる方向、角度で写真を撮っていく。1つの対象物で300―500枚を撮影するが、30分ほどで作業を終えるという。これを専用ソフトで3D化する流れ。

スケッチファブで3Dデータを公開している丹波市教育委員会社会教育・文化財課のページ

かつて、土器などの遺物は手描きで図面化していたが、細かく寸法を測ったり、施された模様などを正確に描いたりする必要があり、同じ遺物でも描く人によって小さな誤差が生じていたという。描ける数にも限度があり、一日に2、3点が精いっぱい。「疲労度も大きく、いったん取りかかると、他の仕事ができなかった」

手描きではなく写真を撮ってデジタル化することで誤差をなくし、誰でも図面化できるようにすることで省力化しようと、西岡さんは数年前、3D化のワークショップに参加。以降、こつこつ1人で作業を進めていた。「撮る枚数は多いが、手描きに比べると断然、楽になった」

そんな折、新型コロナ禍になった。学校は臨時休校になり、子どもたちの学習の進め方が課題になった。同課は、自宅学習の役に立てればと、出土品などの3Dデータをスケッチファブで公開し始めた。西岡さんは「最近、文化庁も博物館のDX化を推進するようになった。所蔵品をデジタルで公開し、誰でも見られるようにするというもの。ようやく時代が追いついてきた感じ」とにやり。

昨年度、以前参加したワークショップで知り合った、3D関連の仕事に精通する男性が作業を手伝ってくれることになり、3D化が加速。男性は4台のスマートフォンを固定し、自動で動くターンテーブルで対象物を回し、シャッターも自動で切るという方法で撮影。一気に90点ほどを追加公開できた。

3Dデータは自由にダウンロードでき、教育や研究はもちろん、商用目的でも利用できるため、商品開発にも活用できるという。西岡さんは、「学校の授業で活用してほしいという思いが強いが、市内の遺跡や出土物などを知る機会になればと思う」と話す。「教育や研究以外でも、行政では気づくことが難しい活用につなげてほしいという思いがある」と期待している。

閲覧にアカウント登録は不要だが、ダウンロードする際には必要。

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