農泊施設オープンへ 農村の日常に「ほっこりして」 築100年超の古民家に宿泊、農体験も

2025.05.30
地域注目観光

農泊施設「山里の宿 輪の里」に生まれ変わった古民家=兵庫県丹波篠山市後川下で

兵庫県丹波篠山市後川下に、築100年を超える古民家を活用した農泊施設「山里の宿 輪の里」がオープンする。地元住民らでつくる「北摂丹波アップストリーム農泊協議会」(野々口賢三会長)が整備。31日から予約を始め、6月14日から宿泊の受け入れをスタートする。豊かな自然と歴史、日本の原風景のような景観を残した山里が目の前に広がるロケーションにあり、のんびりと農村の日常を味わえるのが最大の売り。同協議会は、「ほっこりする後川のファンが増えてほしい。最近は〝自分の田舎〟がない人も増えている。『旅行に行く』というよりも、ここへ『帰る』というような場所に思ってもらえたらうれしい」と話している。

推定築140年の旧石田家。母屋と離れ、蔵などを改修しており、定員は計6室15人(4人部屋×1、3人部屋×1、2人部屋×4)。

改修は最低限にとどめており、すすで黒くなった梁や「田の字」の間取りをそのまま活用したほか、視界の抜け感が特徴の玄関土間、涼しいかやぶき屋根など、古民家が持つ良さを生かしている。

古民家の雰囲気を生かし、最低限の改修にとどめている室内

食事は後川産の米や旬の地野菜などを使った料理を提供。希望に応じて、弁当にしたり、外でバーベキューをしたりと、さまざまな声に応える。

農山漁村に宿泊し、地域資源を生かした食事や体験を楽しむ「農泊」として農水省から認定されており、田植えや草刈り、黒大豆の収穫など、季節に応じた農体験も提供する。また、後川地区の中央を流れる羽束川が目の前にあり、オオサンショウウオやホタルなど、さまざまな生き物と触れ合える。

同協議会は、後川地区が北摂と丹波エリアの結節点であることから、三田や宝塚などの下流も含めて羽束川の流域一帯をPRすることを目指している。

もともと今回、宿泊施設に改修した建物も含めた周辺一帯の整備を進めており、5年前には隣にある農業倉庫を改修。地元の米を使ったカレーや地鶏のバーベキューなどを楽しめるカフェレストランや、裏山にキャンプスペースを備えた「BBQカフェ 輪の里」として事業を始めた。カフェは地元の農家が丹精した野菜の販売も行っており、住民が交流する場にもなっている。

裏山からの景色。静かな山里が広がる

整備が進んでいなかった母屋の活用が懸案事項になっていたが、農泊に認定されたことでついに改修がかなった。

農泊実現に向けて協議会が地元住民から聞き取った意見では、空き家の増加や農業の担い手不足など憂う声がある一方、自慢の米や自然、景観などに誇りや愛着を持つ人が多いことも分かった。農泊については、「にぎやかになるのはうれしい」「後川の空気感を変えずに活性化できれば」などと期待する声があった。

また、「自家製こんにゃくを作っている」「春に草餅を作ることができる」「子どもが遊べる場所を作ってあげたい」などと、提供する体験活動への提案もあり、地域にわくわく感が生まれていることもうかがえる。

メンバーで、農家の石田隆司さん(72)も、「この地区の『自然がええなあ』と感じてもらえたらうれしい。子どもたちが泊まりに来てくれることで、地域に元気がもらえる」と期待している。

1泊2食付きで1人1万6500円。0―6歳は無料、7―12歳は8250円。概要や予約、問い合わせはホームページから。

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