「ミスター」悼む サインボール置き、手作り祭壇 「野球盛り上げてくれた功労者」

2025.06.12
地域注目

故・長嶋茂雄さんを悼んで、サインボールなどを展示している西垣さん=兵庫県丹波篠山市河原町で

「ミスター」の愛称で愛された元プロ野球選手で、元巨人軍監督の長嶋茂雄さんが今月3日、89歳で亡くなったことを受け、兵庫県丹波篠山市河原町の西垣隆男さん(81)が、自宅の倉庫に長嶋さんのサインボールや訃報を伝える新聞を飾るなど、手作りの“祭壇”で哀悼の意をささげている。同時代を生きた根っからの虎党としては、「選手時代は良く思っていなかった」とスーパースターの活躍を歯がゆく思っていたものの、「やっぱり、その生きざまはすごい。大好きな野球を盛り上げてくれた功労者を悼みたい」と語る。

祭壇にはサインボールやスポーツ新聞、茶と花、ジャイアンツカラーのオレンジ色の袋に入った菓子などを供えている。新聞は読売系の「スポーツ報知」を買いに走るほどのこだわりよう。自宅前を通る人の中に長嶋ファンがおり、手を合わせる姿も見られたという。

幼い頃から野球に親しみ、篠山鳳鳴高校でも本格的に白球を追った。その後、仲間と共に篠山少年野球団を立ち上げたほか、母校、鳳鳴硬式野球部の監督も務め、心血を注いで多くの球児を育ててきた。「私は野球のおかげでまっすぐに成長することができた」と言うほど思い入れが強い。

プロ野球の応援はタイガース一筋の西垣さん。数年前、自宅を掃除していると「GIANTS(ジャイアンツ)」とロゴの入ったサインボールを見つけた。アルファベットの「E」や「W」に見える部分があったため、元巨人の江川卓さんのサインだと思っていたそう。

鳳鳴野球部への寄付を募るため、自宅にあった物品を販売した際、サインボールを展示していると、通りかかった観光客が、「これ、長嶋やで」―。「そんなことあるかいな」と思っていると、別の人からも「長嶋や。同じサインボールを持っとる」と言われ、確信を得たという。

長嶋さんのサインボール

「阪神・巨人戦は見に行ったけれど、巨人の選手のサインをもらうはずがない。敵やで」と笑い、「巨人との関わりと言えば、少年野球で川上哲治(元巨人監督)が指導に来てくれたことがあったくらい。なんでこれがあるのか、分からへん」と首をかしげる。

それでもレジェンドのサインボール。「大事にせな」と大切にしまっていたところ、訃報が届いた。
「天覧試合でのサヨナラホームランなど、勝負強さがすごかったし、何事にも一生懸命で、常に全力プレー。誰からも好かれた人だったと思う」と故人を悼み、祭壇を作ったという西垣さん。「自己満足で作っただけ。もし見られたら、いろいろと長嶋さんのことを思い出してもらえたら」とほほ笑んでいる。

今月15日ごろまでは設置するそう。在宅時のみ開放している。

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