「虫が減った」募る危機感 「むしクラブ」主宰の大塚さん 篠山自然の会で講演「生息の動向を観察」

2025.06.21
丹波篠山市地域地域自然

講演会を通して、昆虫の減少に警鐘を鳴らす大塚さん=兵庫県丹波篠山市中で

兵庫県丹波篠山市の「篠山自然の会」(角谷慶治会長、97人)は、同市の大芋公民館に丹波篠山自然塾むしクラブを主宰している大塚剛二さん(83)を講師に迎え、講演会を開いた。演題は「篠山の虫 希少種・美麗種」。大塚さんは自ら撮影した同市内に生息、または生息していた昆虫の写真をスライド上映しながら、生態などを解説した。市内ではもうほとんど見ることができなくなったタガメなどの絶滅危惧種をはじめ、ミヤマカラスアゲハなど姿が美しい昆虫を次々に紹介しながら、「近年、虫の種類も個体数も大きく減少している」と警鐘を鳴らした。講演会は同会総会の後に行われ、会員約35人が熱心に耳を傾けた。

県レッドデータブックBランクに指定される「春の女神」ギフチョウについて、「45年ほど前には火打岩の渓流周辺でよく観察できた」と振り返り、「幼虫の食草ミヤコアオイが育つ林縁が小金ヶ嶽や御嶽にあり、一帯はギフチョウにとって住みよい所だった。しかし、チョウと食草のどちらも乱獲に遭い、さらに周囲の木々の成長によってこの食草が日照不足に陥り減少。これらの受難が続き、市内では恐らく絶滅しただろう」とした。

また、姿が美しいチョウとしてアオバセセリを紹介。「青みがかった緑色の羽を持ち、吸蜜のためネギ坊主に飛来する。こんなにきれいな姿をしているが、ふんに集まることでも知られる」と解説した。

大塚さんは当時、同市郡家にあった兵庫農科大学(現・神戸大学農学部)で昆虫学を学び、卒業後は大阪で中学校の理科教師となった。休日は昆虫を追い求め、丹波地域に足しげく通い、1993年、丹波篠山に移住した。

「60年ほど前の学生時代、篠山では裸電球の街灯にたくさんの虫が集まっていたが、現在、どの街灯にもほとんど姿を見ない」と危機感を募らせる。「草原の減少、農薬、コンビニの明かり、ヘッドライトの誘引による自動車事故、温暖化、シカの食害による植生の貧弱化など、さまざまな要因で昆虫が激減している。昆虫に関心を持ち、生息の動向を観察し続ける人材が必要だ」と訴え、締めくくった。

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