古来の農業と神事との密接なつながりを見つめ直す新しい形のファーマーズマーケット「丹波篠山直会(なおらい)市」が28日午前10時―午後2時、兵庫県丹波篠山市黒岡にある春日神社で開かれる。農家が育てた旬の野菜や、地場の産品を使った加工品などを販売する30ブースが並ぶ。また、神職が各ブースを回って豊穣祈願の祈祷を行い、出店者から来場者へと、自然の恵みに対する感謝の思いを広げる。実行委員会は、「来場者と農家がつながり、農家同士の情報交換の場にもなれば。また、良い伝統文化には意味がある。継承していきたい」とし、来場を呼びかけている。
直会は、神事の後、神様と共に食を頂く古来の習わし。古くから春には豊穣を祈り、秋には収穫に感謝する祭や行事が各地で行われている。
農家を支え、応援する目的でのマーケットの開催に関心があった丹波篠山市内の農家など1次産業従事者やオーガニックにこだわる店舗などが声をかけ合い、8人で実行委員会「直会座」(座長・村上玄一さん)を結成。市と連携している神戸大学大学院農学研究科の八木浩平(准教授)研究室の学生も加わり、準備を進めてきた。
旬の夏野菜、ジビエ、ビールやどぶろく、塩、弁当やカレー、スイーツなどを販売するブースが出店。30ブースのうち20ブースは農家で、スーパーでは買えない野菜も並び、栽培した農家に直接、野菜の特徴や、おいしい食べ方が聞ける。獣がい対策など農業に関する啓発パネル展もある。
午前11時からは、同神社権禰宜(ごんねぎ)の瀬戸大喜さん(33)が各ブースで祈祷し、清められた品が来場者に提供される。学生たちは会場近くでチラシを配って呼び込みを行うほか、スタンプラリーを運営し、エコバッグのプレゼントを計画している。
座長で農家の村上さん(38)は、「自分が作った野菜や、生産者の顔が見える食材が食卓に並んだ時にすごく幸福感があった。値段が高くても農家の未来を考えて地場の物を買う文化がある欧州のように、『農都』を掲げる丹波篠山でも、スーパーだけで完結せず、近くの市で買うことが習慣になっていけば。ぜひお子さま連れにも来てほしい」と思いを語る。
権禰宜の瀬戸さんは、「秋祭りも普段から神社との関わりがあってこそのもの。気軽に神社の境内に来るきっかけになれば」と期待する。
11月には収穫感謝祭の位置付けでの開催を予定。来年以降、徐々に開催頻度を高めるという。