ホタル研究家 畑義一さん(丹波市)

2025.06.09
たんばのひと

畑義一さん

ホタル幼虫飼育し35年

ゲンジボタルの幼虫を飼育し、自宅そばの三井庄川に放流する活動を35年間続けている。6月はホタル観賞会に講師として呼ばれ、忙しい日々だ。小学校長を退職後は毎年、地元の大路小3年生に年3回のホタル学習も行っている。

子どもの頃から生き物が好き。公共団体の依頼を受けて学校でホタル飼育観察事業に取り組んだのが飼育の始まりだった。「まるっきり生態は知らなかったが、すごい昆虫だと感動した」

ホタルが飛ぶ時期になると、三井庄川で雄雌10匹ずつ捕獲し、ミズゴケを敷いた虫かごの中に入れて産卵を待つ。ふ化した幼虫は、水を張った発泡スチロールで飼育。水を替え、餌のカワニナをつぶして与えながら約4カ月育て、台風シーズン後の11月に元の川へ放す。

幼虫の生存率は低く、1匹の雌は500個の卵を産むが、成虫になるのはわずか十数匹という。それでも、「放流を続けていると目に見えて数が増えてきた」。30年ほど前に三宝ダムができ、三井庄川が干上がることがなくなり、ホタルが生息しやすくなったそうだ。

飼育を続けるうち、「大きくならない幼虫」が必ずいることに気がついた。多くの幼虫と異なり、成虫になるのに数年かかる“留年幼虫”だった。「小さな幼虫は大水の時、岩の割れ目などの隙間に潜り込んで流されない。ホタルが全滅せずに生き残るため、獲得してきた知恵なのだろう」

今年初めて、「信州辰野ほたる祭り」(長野県上伊那郡辰野町)を妻と訪れる。「川の水を引いた飼育施設を見学してきたい」と向学心は尽きない。70歳。

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