米の高値が続く中、今年の兵庫県丹波市の主食用米の作付けが、7年ぶりに前年を上回る見通しであることが、作付計画の取りまとめを進めている同市地域農業再生協議会への取材で分かった。ただ、率にして約2%程度の緩やかなもの。高値だからといって転作をやめ、急激な米回帰は生じていない。農業資材の高騰や、高齢化、兼業農家で労働力を増やせない、転作作物との兼ね合い、農機を手放した、農地を預けている、など思いはあっても環境が整わない現実があるとみられる。
同協議会によると、集計中で正確な数字ではないが、50ヘクタールほど増えている。丹波市は、県内自治体別で主食用米の作付面積が最も多い。昨年は2538ヘクタールだった。その丹波市でも右肩下がりで面積減少が続いており、増加に転じるのは異例。
また近年、年によって100―300戸ほど減っていた主食用米の生産者が今年度は50戸程度の減少にとどまる見込み。高い米価が生産継続を後押しし、離農や集積を阻んだとみられる。自家消費と親戚、友人、知人分だけでも生産すれば、労力はかかるが例年以上に喜ばれる。
作付けをせず、農地を維持管理する「自己管理保全」は例年と同程度の50ヘクタールほど増える見込みで、作付面積の減少自体は止まらなかった。
主食用米が増えたのは、他の作物からの乗り換えとみられる。昨年21ヘクタールあった飼料用米が、今年は1ヘクタール未満の見通し。丹波大納言小豆は60ヘクタールほど、丹波黒大豆は枝豆と実取り合わせて20ヘクタールほど減る見通し。飼料用米はほぼ全部、小豆と黒豆の一部が主食用米に振り替わったとみられる。
飼料用米は管理や品種は異なるものの、同じ米作り。乗り換えがしやすかったとみられる。一方、稲をわらごと発酵粗飼料にするWCS用稲は、横ばい。10アール当たり8万円の水田活用直接支払交付金があり、稲刈りは不要。作業の手間と収益を天秤にかけたとみられる。
落ち込みが大きい丹波大納言小豆は、昨年の未曾有の凶作が影響し、小豆離れが生じたとみられる。作付面積が200ヘクタールを大きく割り込む。近年、作付けが増えていた黒大豆は、実取りより枝豆で減少が大きい見通し。
同市氷上町の農事組合法人は、コシヒカリと小豆の割合を変えなかった。「主食用米が良いからと敏感に反応しない方が良いと思った。きちんと栽培し、これまでの取引先を大事にしたい」と言う。
主食用米を10ヘクタール以上作付けする大口の生産者は、「増やした」「横ばい」と経営判断が分かれているが、「値段に振り回されたくない」思いは一致している。
最終的な市の集計結果は、7月に判明する。
農林水産省が先月公表した4月末時点の全国水田作付意向調査によると、昨年の実績と比べ4・6%増と作付面積が大幅に増えている。