写真の伝統技法守り継承へ 旧理科室改修し暗室に 6月末までクラファン挑戦

2025.06.15
丹波篠山市地域

暗室とワークスペースへの改修を計画している理科室=兵庫県丹波篠山市福住で

兵庫県丹波篠山市福住の地域交流拠点施設「SHUKUBA(シュクバ)」(旧福住小学校)の2階にスタジオ・ギャラリー「FOTOZUMI(フォトズミ)」を開設している写真家Koichiro Kurita(栗田紘一郎)さん(82)が、同施設1階の理科室だった部屋を新たに借りて、写真暗室とワークスペースを造る計画を立てている。改修工事の資金を、インターネットを通じて調達しようと6月末までクラウドファンディングに挑戦している。目標金額は360万円。19世紀に発明された古典的な写真技法を用いたアート作品を創作している栗田さんは、「伝統的な技法を守り継承していくための拠点としたい。地域社会への貢献やアート写真制作の拠点としての交流の場を目指す」と話し、支援を募っている。

旧理科室は、机や手洗い場、天井から伸びた電源コードなど、閉校前の姿がそのまま残されている。机や棚はできるだけ有効活用し、必要最小限の工事を行う予定で、古典プリントによる作品制作用の大きな暗室と、フィルム写真用の小さな暗室を作る。講義やミーティングが行えるワークスペースも作り、額やマットの製作もできるように道具をそろえていく。

写真家が常駐し、アートとしての創造的写真制作ができるように技術的なサポートを行い、古典プリントを中心とした作品の制作や保管、展示用マット作りなども指導する。さらには、国内外のアーティストを招き、展示会やワークショップを展開していく計画。

目標額以上の支援が得られると、暗室の機器や機材の購入、写真用薬品の調合や通信販売システムの構築も行っていく。

支援の返礼として、ポストカード(支援額1万円)や、古典技法によるプリントワークショップへの参加権(同3万円)、撮影機材を積んだ軽トラックの車体に企業名・ロゴ掲載(同30万円)などを用意している。

ライフワークとして活動を続けるカロタイプで丹波篠山の風景を撮影するために制作したカメラ=兵庫県丹波篠山市福住で

栗田さんは、広告写真家からアート写真家に転向。1990年にアメリカに移住し、そこで数多くの古典写真技法と出合った。ニューヨークでの30年間の活動で、大型和紙を使ったプラチナプリント作家として国際的に知られるようになり、日欧米の多くの美術館に作品が収蔵されている。

2020年に帰国し、FOTOZUMIを開設。一般社団法人・Center for Slow Photographyを立ち上げ、仲間と共にアート写真の制作や企画展示、ワークショップなどの活動を続けている。

現在、最も注力しているのは、丹波篠山に今なお残る江戸時代後期からの建造物や文化遺産、それらを育んできた自然をテーマにした作品づくり。江戸期(1841年)にイギリスで発明された写真技法「カロタイプ」で撮影するプロジェクトを進めている。カロタイプは、感光剤を塗った紙ネガをカメラにセットして撮影する技法で、栗田さんが使用する紙ネガのサイズは62×77センチと非常に大きいため、カメラもおのずと超大型で特注品。軽トラックの荷台に乗せて運搬し、撮影には4、5人を必要とする。

栗田さんは、「丹波篠山は静かなたたずまいと豊かな自然に恵まれた場所。ここでアートに触れ、自分自身と向き合う時間を持てるような場所をつくり、地域の文化や歴史を振興し続けていきたい」と話している。

取り組みの詳細は、クラファンサイト「READYFOR」(https://readyfor.jp/projects/Centerfor-SlowPhotography)。

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