兵庫県丹波篠山市にある兵庫医科大学ささやま医療センターは、4月末で「地域包括ケア病棟」(44床)を閉鎖した。同医大は丹波新聞社の取材に、「看護師不足から閉鎖せざるを得なくなった」とし、入院患者数の縮小運用や他の医療機関への転院、紹介対応などを行い、「スムーズな閉鎖につながった」とした。一方、同センターの運営を巡っては、丹波篠山市との基本協定の満了日が今年7月に迫っており、今後の動向が注視されているが、医大は、「現時点でお答えできることはない」とした。
同病棟は、▽急性期の治療を終えたものの経過観察や療養が必要な人▽在宅・生活復帰のために支援が必要な人▽在宅療養をしていたが、急性疾患により入院が必要になった人▽家族の事情で在宅療養が一時的に難しくなった人―を対象に、2015年7月に設置した。
昨年末時点で看護師・准看護師を合わせて99人が在籍していたが、5月までに15人が退職したことから同病棟を閉鎖せざるを得なくなったとし、「市民の皆さまには大変ご迷惑をおかけする」として理解を求めている。
看護師の退職が相次いだ要因については、「看護人材不足はセンターだけではなく本院も同様で、現在の医療機関共通の課題という認識」とした上で、それに加えて「センターの運営状況など複合的なもの」とした。
同センターは2020年に分娩を休止。赤字が続いていることから、収支改善などを目的に、今年3月末で▽外科▽産婦人科▽泌尿器科▽耳鼻咽喉科▽精神科▽眼科―の6診療科を閉鎖した。現在は一般病棟50床、回復期リハ病棟44床の計94床で運用している。
市は、18年に締結した基本協定をもとに、運営補助金として年間1億2600万円を医大に補助してきた。
一方、市はこれまでに「医大がセンターの経営移譲を視野に、市内の医療機関と個別で協議している」と広報している。このことについて医大は、「協議などに関しては、守秘義務の観点から詳細についてのコメントは控える」とした。
市は、今年度の運営補助金を7月までの4200万円しか予算化していない。「市内の医療機関と協議された結果をもとに、協定をどうされるのか、医大からの提案を待っている段階」とし、「ただ18年の協定時と現在の医療センターでは診療科も変わっているため、単純に協定期間を延長するわけにもいかず、内容を見直さざるを得ないと考えている。そのためにも早く話し合いたいが」とやきもきする。
酒井隆明市長は、「旧町が国立病院の移譲先として兵庫医大を頼りにされたのは、私立であっても教育機関であり、公的な性格を持っておられると感じたからこそ。市民の信頼を損なわないよう、速やかに協議を行ってもらいたい」としている。