兵庫県丹波篠山市立さぎそうホール(同市今田町今田)を活用し、「メガヱビス。」の看板を掲げて映画上映事業を行っている株式会社コドルニス(同県丹波市青垣町山垣、社長=近兼拓史さん)が、映画を見たい子どもたちのために大人が料金を先払いする「足ながシネマ」の取り組みをスタートさせた。近兼さんは、「映画文化を根付かせるためには、子どもたちが小遣いを気にせず自由に映画を見られる環境をつくることが必要。映画は心の栄養。子どもたちが大人になった時、次の子どもたちを招待してくれるようになれば、最高にうれしい文化の循環」と期待し、賛同を呼びかけている。
大人が取り置きしたチケットを利用して、子ども(18歳以下)が無料で映画を鑑賞できる仕組み。大人は1枚1000円の鑑賞券を同館のフロントやウェブショップで先払いする。
来館した子どもは、入り口に設置している無料チケットの数を掲示した「足ながカウンター」を確認後、フロントで「足ながシネマでお願いします」と申し出る。映画鑑賞後、映画に対する簡単な感想と、“足ながおじさん”ならぬ支援者へお礼のメッセージを書くことが条件。
取り組みのきっかけは、一昨年の丹波国際映画祭。人気アニメ映画の上映時に小学生の女児4人が来館したが、そのうちの一人が「私はお金がないからここで待ってる」と話す場面に出くわした。「子どもたちにとって1000円は大金。経済格差によって、多感な子ども時代に文化的経験に差がつくのは残念」と感じた近兼さんは、各地で普及している「こども食堂」の仕組みにヒントを得て、丹波市氷上町成松の「ヱビスシネマ。」でこの取り組みを始めた。「恩送り」のシステムは好評を博し、県内外から賛同者が相次ぎ、利用した子どもたちも600人近くにのぼるという。
近兼さんは「頭が柔らかく感受性が豊かな子ども時代に多くの作品をスクリーンで見て、いろいろと感じてほしい」とし、丹波市での成功例をもとに「丹波篠山市でも市内全ての小中学校の子どもたちを映画に招待できたら」と意気込んでいる。