愛育班員全国大会で佳作 手記「語り継ぐこと」 避難所へのおにぎり作り題材に

2025.06.25
丹波篠山市地域

愛育班員全国大会で手記が佳作に入った後藤さん(左)と会長表彰を受けた臼井さん=兵庫県丹波篠山市北新町で

兵庫県丹波篠山市のひおき愛育班の後藤泰子さん(83)が執筆した手記「語り継ぐこと」が、このほど東京都で開かれた「第57回愛育班員全国大会」で佳作に選ばれ、表彰された。後藤さんは、「一生懸命、心を込めて書いたけれど、まさか表彰を頂けるとは。ひおき愛育班の活動を多くの人に知ってもらえたらうれしい」と喜んでいる。

後藤さんの手記は、阪神・淡路大震災時にひおき愛育班が避難所へ届けるおにぎりを作り続けたことが題材。当時、班長だった藤木千皓さん(95)の呼びかけに応じ、「明日ではない。今なんや」と、その日のうちにおにぎり作りを始めた。それから40日間にわたって毎日、おにぎりを握り続け、その数は1万個を超えた。

震災27年となった2022年、本紙がこの活動を改めて報じたことがきっかけで、NHKが再現映像を撮影し、シリーズ「あの日を胸に」として放送した。

おにぎり作りに関わった班員は藤木さんだけとなったが、再現映像の撮影には後藤さんら現在の班員も参加。その中で、藤木さんから「手記にしておいて」と頼まれたことから筆を執った。

手記の結びには、「街は素晴らしい復興を遂げた。あの日の冷たさ、寒さや数多目にした悲しい光景は拭い去ることはできないけれど、相互に声をかけ合い、励まし合った経験は、尊い教訓となって一つたりとも忘れることはないだろう」「震災の記憶は風化させることなく、後世に語り継いでいくことの大切さを強く心に刻んでいる」と記した。

後藤さんは、「自分はおにぎりを作っていないけれど、すごい先輩たちだと改めて感じた。このことを書いて残しておくことが大事だと思った」と話している。

同全国大会では、市健康課の保健師、臼井幾子さん(50)が、愛育班の「育成者」として「恩賜財団母子愛育会会長表彰」を受賞した。班員との信頼関係を築き、班員の声かけメモや分班長会議での意見を大切にし、愛育班と協働して地域の課題解決につなげてきたことが評価された。

臼井さんは、「育成者として賞を頂いたけれど、私が育ててもらった」と言い、「市内の愛育班が減り、活動が難しくなってきている時代だが、班員の皆さんの〝頑張ろう〟という気持ちがある限り、私も支えていきたい」と意気込んでいた。

関連記事