身近にある恐竜化石発見地 市民の手で発見を 「篠山層群の化石」語る

2025.06.27
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篠山盆地と篠山層群の化石について講演する足立さん=兵庫県丹波篠山市黒岡で

「聞きたい!知りたい!丹波篠山の文化」をテーマにした今年度の「丹波ささやま市民文化講座(全7回)」がこのほど、兵庫県丹波篠山市民センターで開講した。113人が受講。初回は、化石研究家、足立洌さん(81)=兵庫県丹波市=が、「篠山盆地と篠山層群の化石について―世界に誇る郷土の自然遺産」と題して講演し、「次々と新しい貴重な知見を提供する篠山層群の化石は、世界中の研究者にも認識されるようになった。篠山層群からは今後、何百年先までも貴重な化石の発見が続く。それらの調査に地元市民が積極的に関わってほしい」と期待を口にした。要旨は次の通り。

篠山盆地は、3つの地層からなる。下から3億―2億年前に太平洋からやって来た海底の岩盤「丹波帯」「超丹波帯」、その上に約1億年前に陸上で堆積した篠山層群が乗っている。篠山層群の最深部は1400メートルにも及ぶ。篠山層群は、恐竜が繁栄していた約1億1000万年前(白亜紀中頃)にユーラシア大陸の東岸に形成され、次々に新種の化石が発見されるのは、世界的にも少ない白亜紀前期(約1億4500万年―1億50万年前)の陸成層であるため。

篠山層群を語る上で、化石の保存状態の良さも特筆する点。隣市の丹波市山南町上滝でカエルの全身骨格の化石が2体と、骨のかけらが数千点見つかっているが、これも国内では例がない。恐竜の大きな骨は化石になりやすいが、小さな骨は化石になる前に腐食する。丹波篠山市宮田で見つかり、2013年に発表したササヤマミロス(以下、ミロス)と名付けた小さな哺乳類の下顎の化石は、潰れや変形が全くなくて完全な立体として見つかり、世界中が驚いた。

恐竜時代は多くの種類の哺乳類がいたが、ほとんどが絶滅してしまい、現在では、▽単孔類(カモノハシ、ハリモグラ)▽有袋類(カンガルー、コアラなど)▽哺乳類の約95%を占める有胎盤類―の3種類が生き残っている。ミロスは歯の特徴から有胎盤類の祖先だと分かっており、ヒトにもつながる祖先だ。有胎盤類の祖先は白亜紀前期に出現したとされるが、その時代の有胎盤類の化石は中国などから数点しか見つかっていないので、保存状態の良いミロスの化石は大変貴重な研究資料だ。

恐竜と哺乳類は、2億2000―2億3000万年前、ほぼ同時に出現し、その時点では、恐竜は大型犬サイズの肉食性で、哺乳類は子ネズミサイズの昆虫食性だった。恐竜は大型化・多様化して1億6000万年間繁栄したが、哺乳類は恐竜におびえながら、夜行性の生き物として細々とくらしていた。この長きにわたる困難なくらしが、哺乳類の大脳を大きく進化させた。

気温の低い夜間に敏捷な捕食活動をするには、温血性と、優れた視覚、聴覚、嗅覚を機能させる脳が重要。それらを維持するには大量のエネルギーが必要だ。ミロスの臼歯はたくさんの山と谷があって、昆虫の硬い体もすり潰し、最大限のエネルギーを摂取できた。このタイプの臼歯を「トリボスフェニック型臼歯」というが、ヒトをはじめとするほとんどの哺乳類がそれを引き継いで、それぞれの食性に合った形に進化させている。

篠山層群の領域は大半が丹波篠山市側にあり、しかも皆さんの日常生活の真っただ中にある。これほど一般市民の身近に恐竜化石発見地が存在する所はまずない。保護区でない場合、発見した化石は河原の小石と同じように自然物なので発見した人の所有物だ。多くの市民に篠山層群に親しんでもらい、市民の手で新しい化石を発見し、篠山層群の調査や研究に貢献してほしい。観光資源としての活用も考えたい。

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