まさかの遭遇 草刈り中にクマとばったり 「こんな身近にいるなんて」

2025.07.01
地域注目自然

子熊の背中。くぼ地に頭を突っ込んでじっと動かなかったという=兵庫県丹波市青垣町稲土で(提供)

「クマがおって草刈れへん」―。6月22日午前10時ごろ、河川愛護活動で兵庫県丹波市青垣町を流れる稲土川堤防の草刈りをしていた西山最寄(組、隣保のような単位)の住民が、草むらに潜んでいたツキノワグマの幼獣2頭と出くわした。連絡を受けた市農林振興課職員が捕まえ、山に放した。作業をしていた人たちは「ねぐらにしていたんだろうか。こんなに身近にクマがいるなんて」と驚いていた。

遭遇現場は西山最寄の南端近く。ゲンジボタルの名所として有名な同川の見物スポットから100㍍ほど上流。

左岸を、上、中、下流の3班に分かれて作業中、上流と中流班がたまたま〝挟み撃ち〟にしてしまった。中流班が気づき、市に通報。「クマがおって、これ以上刈れへん」と上流班に連絡した。下流班も合流し、作業の手を止め、クマに見入った。

2頭とも30―40㌢ほどで恐さはなかったという。1頭はうつぶせで穴に頭を突っ込んでじっと動かず、もう1頭は草むらに身を潜めた。刈り残した草はわずかで、隠れる余地が乏しく、市職員が2㍍ほどの柄が付いた直径60㌢ほどの網で難なく捕獲した。

川の堤防の草刈りの手を止め、子熊がいる草むらを眺める住民たち(提供)

右岸は山。川際に有害鳥獣防護柵があり、自治会長立ち合いの元、2頭とも柵のある山側に放し、花火で追い払った。住民らは母グマがいないか気にし、辺りを警戒したが、誰も見かけなかったという。

現場から100㍍ほど下流で8日午前7時半ごろ、地元住民が写真に収めた市道を横断する成獣が、母グマの可能性がある。

ツキノワグマは有害捕獲の対象だが、地元から駆除要望は出ておらず「追い払い」扱いとした。駆除は、生活環境がおびやかされる、クリやカキなど誘引するものを取り除いてもなお出没がやまない場合などに限られる。

市は同日、稲土を含む同町神楽地区にクマの出没を知らせ、夜や早朝は特に気をつけ、入山する際は音が鳴る物を持参することなどを防災行政無線で呼びかけた。

【ツキノワグマの生態に詳しい横山真弓県森林動物研究センター研究部長の話】 クマは冬眠中に出産する。大きさと運動能力の乏しさから、今年生まれた子熊と思われる。今が交尾期。母グマは子を殺されると発情回帰するので、雄は子を殺し、母グマと交尾しようとする。母グマは雄に見つからないよう、冬眠と子育てに使った穴を離れ、子と移動しながら生活する。雄は人里近くを嫌がるので、人が来ない川沿いの草むらは、子育て中の母グマにとって好都合な場所だったんだろう。

母グマと思われる、8日に目撃された成獣(提供)

母グマは木の上など近くにいたと思う。引き離しても、子の鳴き声を聞き、親子は合流する。一年間、親子で行動する。子が小さいうちは、親は遠出できないので近くで餌を探す。まだあまり遠くに行っていないと考え、誘引する食べ物がないか、注意した方が良い。

関連記事