兵庫県内産輸出陶磁を紹介 博覧会隆盛明治の作品150点 陶芸美術館で特別展

2025.07.02
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「白磁梅鶯貼付籠形蓋付壺」などが展示された展覧会場=兵庫県丹波篠山市今田町上立杭で

開館20周年を迎えた兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市今田町上立杭)で記念特別展「博覧会の時代 HYOGO発、明治の輸出陶磁」(同館、丹波新聞社主催)が開かれている。大阪・関西万博の開催に合わせ、博覧会が盛んに行われた明治時代に兵庫県内で作られた輸出陶磁を紹介。明治の工芸品は近年、その技術の高さからも注目を集めているといい、出石の白磁や神戸絵付など、時代の潮流が生んだ華やかな陶磁器150点を展示している。8月24日まで。

モチーフにした竹籠の竹の節や網目など、竹細工の細やかな部分や梅花が超絶技巧で見事に表現された出石の「白磁梅鶯貼付籠形蓋付壺」が目を引く。角皿の縁に唐草や花の絵を埋め尽くすようにぎっしりと描き、当時海外で人気を博した花鳥図を中央に描いた神戸絵付の「色絵金彩花鳥図四方皿」なども展示され、来場者の関心を引いている。

幕末から欧米諸国に広まったジャポニスムの影響で、日本の美術工芸品(浮世絵や着物、陶磁器など)は、諸外国で一躍脚光を浴びた。明治期に入り、政府が初めて参加した1873年(明治6)のオーストリア・ウィーン万国博覧会の成功は輸出品の製造を後押しし、有田(佐賀)や薩摩(鹿児島)、九谷(石川)などで豪華絢爛な陶磁器が盛んに作られた。国内外の博覧会への出品や輸出が奨励され、陶磁器製造は、富国強兵を目指すための産業振興政策(殖産興業)と深く結びついた。

県内の産地では、白磁の細工物を得意とした出石の盈進社や、鮮やかな色絵製品を焼いた姫路の永世舎、江戸後期に創業した珉平焼の流れをくむ淡路の淡陶社などが輸出陶磁を焼いたことで知られる。

神戸では港に近い利点を生かし、素地を他産地から取り寄せ、絵付けのみを行う製造者や販売店が操業。当時の人気を反映した、九谷の赤絵や薩摩の金襴手に倣った、「神戸絵付」と呼ばれる陶磁器が焼かれた。

月曜休館(7月21日、8月11日は開館し、その翌日休館)。午前10時―午後5時。一般700円、高校生以下無料。同館(079・597・3961)。

関連イベントは次の通り。

【記念講演会「博覧会の時代―ジャポニスムと日本」】 7月12日午後1時半―3時。講師は佐藤道信さん(東京藝術大学名誉教授)。定員110人(事前申し込み制)。無料(観覧券の半券が必要)。

【同館学芸員によるギャラリートーク】 7月19日、8月23日。いずれも午前11時から1時間程度。無料(観覧券の半券が必要)。

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