兵庫県丹波地域(丹波市、丹波篠山市)の木材で作った炭が、神戸市でコーヒー豆の焙煎に使われる―。そんな「森とコーヒーをつなぐ循環プロジェクト」が始まった。取り組んでいるのは、丹波地域の林業家や森林整備関係者などでつくる一般社団法人「丹波森林LSC」と、神戸市灘区の「萩原珈琲」。川の源流で育った木を活用し、河口の都市部で製品作りに役立てる取り組みだ。背景には、活用しきれていない森林資源をどう生かすか、その取り組みに都市部の企業がどう関わっていくか、という社会課題がある。関係者らは、「今後、森林の活用はさらに注目される。今回のプロジェクトが価値ある取り組みになる」と期待を寄せる。
同法人は、丹波、丹波篠山両市の木材店代表や林業家などで結成。代表理事は「FOREST GROUP」(丹波市青垣町文室)代表の足立龍男さん(49)が務める。
同法人は、地域産木材の調達から販売までを行うサプライチェーンの構築や、都市部の企業と連携した販路拡大を行うほか、山に関する相談窓口となるウェブサイト「森機応変」の運用などに取り組んでいる。
すでに森林に関する企業向けの勉強会や現地視察会を開催。また、各企業に丹波地域の木材の価値を伝えることで、新しい事業を生み出す可能性も探る。
萩原珈琲は1928年創業の老舗で、炭火焙煎にこだわったコーヒー豆を各地の喫茶店などに卸している。焙煎に使う炭にもこだわり、和歌山や鳥取などで作られる国産の炭を使用しているが、地元兵庫の炭がなかった。
森林資源の活用に関心が高く、神戸市役所内で運営するカフェでは、NPO法人「バイオマス丹波篠山」(丹波篠山市垣屋)が間伐材から作った割りばしを使用。それらの縁もあり、丹波産材を使ったコーヒー焙煎用の炭を作ることが決まった。また、使用後の割りばしは回収してバイオマス燃料として再利用する。
今年は焙煎用炭や割りばしの需要量の調査や、木材調達ルートを確認し、来年、炭の品質やコストの検証、二酸化炭素削減量などを試算・可視化。2027年に、森林整備から木材加工、炭の生産、割りばし製造、利用・回収という循環モデルを確立する。
炭作りを担うバイオマス丹波篠山の高橋隆治代表(54)は、「祖父が炭を作っていたことを覚えている。ぐるっと回って、今回、自分が作ることになるとは。とても面白いし、ワクワクしている」と笑顔で話す。
萩原珈琲社長の萩原英治さん(43)は、「森林保全は伐って、使うことが一番。丹波地域は川の源流であり、始まりの地。川上で出来た木のエネルギーを川下の神戸で工業製品に使うことに魅力を感じるし、木材の“出口”として、とても価値のある取り組み」と話す。
代表理事の足立さんは、「日本では木が成長する速度に対して、地域産材の活用は5分の1と、どんどん山が“オーバーフロー”していている。また、山の中では生物多様性が失われ、緑豊かに見えるかもしれないが、実は“砂漠化”しているし、土砂災害回避の点からみても危機的な状況。適切に伐って、使わないといけない」と警鐘を鳴らす一方で、「都市部の企業は社会貢献活動として森林資源の活用に取り組み始めており、これから加速する。うまく連携することで、企業にとっても地域にとっても良い循環をもたらすことができる」と話している。



























