東北を中心に熊の出没が増加し、人を殺傷する事件まで頻発する中、兵庫県丹波篠山市内では21日時点ですでに昨年度1年間を上回る18件の「目撃情報」が寄せられている。市境や府県境の山裾が多く、中には住宅地内や平地のど真ん中での目撃例もある。ただ、市が調査した結果、明確に熊の痕跡が確認できたのは1件のみ。イノシシなどを熊と誤認したケースもあるとみられる。市は、「熊の話題が増えていることで市民もナーバスになっていて、誤認されている可能性もある」としながら、「松茸シーズンで、人が山に入ることが増える時期でもあるので、十分に気をつけて」と注意を呼びかけている。
今年度は4月4日に最初の目撃情報が入り、以降、毎月1―4件のペースで情報が寄せられている。まだ年度途中の上、冬眠前のこれからの時期が最も熊の動きが活発になるため、過去12年間で最多だった2018年度の24件を上回る可能性もある。
山から離れた平地で目撃情報があった際には住民に衝撃が走ったが、市が調査した結果、足跡などの痕跡はなく、「近くにイノシシのねぐらがあるため、誤認されたかもしれない」という。
また、10月に入り、同じ住宅地内のごみステーション近くで2日連続、目撃情報があった。市は、「その場所に執着している可能性があると危険」として、周辺を調査し、監視カメラを仕掛けたが、痕跡や映像は確認できなかった。近くの山裾に獣害柵があるが、熊が乗り越えたような、ひしゃげた個所もなかったという。
同じく10月には峠道を走行中のバイクの運転手から、「熊に並走された」という情報もあったが、匿名情報だったため、詳細は分からないという。
昨年度は計16件の目撃情報があり、一昨年度の7件の倍以上。栗や柿の木が折られるなどの痕跡や、歩道を走る子熊の映像が収められるなど、確実な情報が多かった。市は、「山が凶作だったため、人里に降りてきたのではないか」と推測する。
一方、今年度は明確に痕跡があったのは、足跡が見つかった1件のみ。市は、「痕跡により『いた証拠』はあっても、痕跡がないからといって『いなかった証拠』にはならない」としつつ、「熊が人を襲うニュースが報じられる中で、市民が過敏になっている可能性はある。特に朝や夕方など暗い時間帯は他の動物と見間違えることもあるよう」とする。
ただ、「これまで丹波篠山は通過点とされてきたが、(隣接する)丹波市で子育てをしているという情報があり、昨年度に子熊が目撃されていることから、丹波篠山で子育てしていてもおかしくない」とする。
特産の黒枝豆の販売が始まり、秋の観光シーズンに突入した丹波篠山。観光客から、「篠山城に行く予定だが、熊は大丈夫か?」などという問い合わせの電話もあり、市は、「『絶対に大丈夫』と言えないのがつらいところ」と話す。
今年は柿が豊作とみられ、放置された柿が里に誘引するきっかけになりかねない。
市は、山に入る場合は熊鈴やラジオを携帯することや、万が一、目の前で遭遇した場合は▽目を離さずに、ゆっくりと距離を取る▽スマートフォンなどで撮影しようとしない▽襲い掛かられた場合は、手で首の周りなどを防御しながらうずくまり、致命傷を避ける―などと啓発しており、「特にカメラのフラッシュに驚いて襲ってくる可能性があるので、興味本位で撮影しないで」と警鐘を鳴らしている。
熊の目撃情報は、「丹波篠山デカンショ防災ネット」で配信している。通報は市や警察へ。



























