きょう17日で阪神・淡路大震災から26年―。1、2カ月の想定ながら実際は6カ月になると言われる避難所での生活を、より居住性の高い空間で快適に過ごしてもらい、災害関連死の減少につなげようと、兵庫県丹波市のパネル加工「谷水加工板工業」(谷水ゆかり社長)が、体育館などでの避難者向けの木製の組み立て式間仕切りパネルセットを開発した。既存の段ボール製間仕切りと比べ、長期間の使用に耐えられるほか、壁や床の拭き掃除ができ清潔に保てる。丈夫で鍵も付いており、プライバシーも一定保護される。兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科の室崎益輝教授の監修を受けている。
「SEREN protect」(実用新案出願済み)と名付けたキットは、ベニヤ板にプリント合板を張った壁パネルと、防水機能などがあり脱衣所などに使われるCFシートを張った断熱材の床パネルのセット。
壁パネル10枚を組み立てると、天井はないものの、自立する2メートル×2メートルの木製の個室になる。壁、床ともに、拭き掃除、新型コロナウイルス対策のアルコール消毒ができるほか、女性が性被害に遭うことがないよう、観音開きの戸には鍵がかかる。壁にもたれかかることもできる。
1枚2・5キロとパネル(高さ136・5センチ、幅45センチ、厚み1・7センチ)は軽く、側面の凹凸をはめ込むだけ。道具は不要で、説明書がなくても2人で10分で組み立てられる。壁パネルは、日本人成人男性の平均身長の目線から近付くと見えるが、少し離れると見えない高さにした。
室崎教授が会社見学に訪れた際に、震災直接死が50人に対し、震災関連死が200人あった熊本地震の例などをひもとき、長期化する避難生活が生命を脅かすことから、より質の高い避難生活を送れるようにすることの重要性を説いた。
従来の段ボールの間仕切りは、長期間の利用に不向きなことや水気に弱く、掃除などがしづらいため、清潔に保てないなどの問題があると教わった谷水社長は、より強固なプライベート空間が保てる木のパネルを発案。試作を重ね、室崎教授に見せながらキットを完成させた。
谷水社長は、「避難所の間仕切りは段ボールが最適と思っていたので、室崎先生の話にびっくりした。同時に、技術も設備もあり、量産体制も取れるうちならできるし、うちがやらなければいけないことだと思った」と振り返る。
県の広域防災センターなど、行政に納入し、備蓄してもらうことを目指す。「使い捨てではないので、相互応援にも役立ててもらえる。このパネルで減災のお役に立ちたい」と話している。
1月27日販売開始。1台7万6800円(税別、送料別)。200台以上の注文は、1台6万6800円(同)。同社(0795・82・2117)。
【室崎教授の話】
いいものを作ってもらった。段ボールの間仕切りは、応急処置的に使われる間に合わせだ。長く囲まれていると何となく息苦しくなり、もっと快適な生活空間が必要だった。谷水さんのパネルセットは、一つひとつの世帯の空間ができ、清潔ですっきりしており、プライバシーも守れる。断熱材床パネルは温かい。あらかじめ備蓄しておけば、短時間で生活空間がつくれる。使い捨てでなく、繰り返し使えるのも良い。