兵庫県の但馬家畜市場でこのほど開かれた但馬牛の生体品評会「第103回兵庫県畜産共進会」で、同県丹波篠山市味間奥の「兵庫田中畜産株式会社」(田中久工代表)の「良春」号が、最高位の名誉賞を受賞。審査後の競りでは、過去最高値となる1200万円で落札された。12年ぶり4回目の名誉賞を受けた田中代表(46)は、「名誉賞は牛飼いとして一番目指すところ。技量や技術が認められ、光栄に思う」と笑顔で話している。
世界的に名高い但馬牛の品質を競う大会。肉牛の部では各JA管内の予選を通過した59頭が審査された。
32カ月去勢で、体重737キロの良春号。肉付きが良く、「詰まった感じ」(田中代表)という、但馬牛の理想形を体現した。
競りでは初めてフィリピンの高級レストランが過去最高値で落札。と畜後の肉質も最上位の「A5」に格付けされ、名実共に最高級の但馬牛となった。
田中さんは12年前に3連覇を達成しており、昨年、一昨年は全体2位の最優秀賞1席に入るなど高い実績を誇る。
夜が明ける前から仕事を始めるという田中さんは、品質の高い牛を育てる秘訣について、「牛は物を言わないので、日々の観察と手入れでこちらがどこまで理解できるかが重要。暑い日や寒い日、湿度が高い日、低い日があるので、牛の状態を的確に見極めること」と話す。
このほど丹波篠山市役所を訪れ、酒井隆明市長に名誉賞の受賞を報告。「但馬牛には1300年の歴史があるが、自分が携わることができる時間は長い歴史の中でほんのわずか。今後も後世に残していくため、他の農家と切磋琢磨しながらより良い牛を育て、さらに名声を上げていきたい」と決意を語った。
酒井市長は、「丹波篠山の畜産業のリーダーとして活躍していただき、大変誇りに思う。これからも丹波篠山牛を盛り上げていってほしい」と期待していた。