美術家多田 文昌 (ただ ふみあき) さん

2004.11.14
たんばのひと

古代への憧れ止まず
美術家多田 文昌 (ただ ふみあき) さん (東京都在住)
 
1964年 (昭和39年) 丹波市春日町生まれ。 福知山成美高校卒。 現在は篆刻の講師としても活躍中で各地の朝日カルチャーセンターやNHK文化センターで指導。 著書は、 「石のハンコ実例百科」 (木耳社) など4冊。
 
 写真家としてスタートを切り、 その後、 さまざまな美術的表現にチャレンジ。 コカコーラの 「茶流彩彩」 のパッケージや、 高田賢三氏の新会社のロゴマークをデザインし、 各種雑誌の表紙も手がけた。 今は、 篆刻 (てんこく) に使う石印材を素材に作品を刻んでいる。 「やりたいことがはっきりしたから、 もう雑誌や広告の注文は受けない。 自分の作品を残すために本の出版に力を注いでいます」
 石の重みで床がゆがんでいるほど、 仕事部屋には石が積み重なっているそうだ。 「机に向かって数日、 石を刻み続けることもある。 一生、 部屋を出なくてもいいぐらい面白くて楽しい」 という。
 伝統芸術などの世界には 「守・破・離」 という言葉がある。 型を守り、 やがて型を破って離れていくという意味。 「僕は美術教育を受けていないアウトサイダーなので 『守』 がなく、 型を崩すのにたけている」 と無邪気に笑う。 作品のオリジナリティに対する評価は高い。
 幼少のころから歴史に興味を持ち、 黒井城で軒丸瓦を発見したことなどが当時の丹波新聞にも報じられた。 春日町七日市で弥生時代の遺跡の発掘にも参加し、 「将来は考古学者になりたかった」。 お仕着せの勉強に反発して学者はあきらめたが、 考古学へのあこがれは今も色あせない。 心は古代に向かい、 漢字以前の記号、 ヒエログリフ (古代エジプトの象形文字) などをモチーフとして石に刻む。
  「丹波には一日も早く帰りたい。 東京は人の住むところじゃないですよ」。 作品に使う葉蝋石 (はろうせき) は丹波で出土することがわかったという。 また、 今後の活動として興味を寄せている茶道の 「茶杓」 には竹を使うが、 丹波は日本一良質の竹が取れるそうだ。
 NHKのテレビ番組 「おしゃれ工房」 に1月17日(月)出演予定。

(上 高子)

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