安全な農産物を追求
全国農協中央会常務理事 土屋博 (つちや・ひろし) さん (東京都文京区在住)
1952年 (昭和27年) 篠山市生まれ。 篠山鳳鳴高校、 岡山大法文学部卒業。 76年JA全中に入会、 昨年春より現職。
全国の農協を束ねる中央組織 (略称JA全中) の事務方トップの1人。 教育から総務企画など広範囲の仕事を担当する。 目下、 10月に開く全国大会に向けて準備に余念がない。
主要議案は 「トレーサビリティ (追跡可能性) の徹底」。 バーコードやICチップを使って農畜産物の生産、 流通履歴を検索、 表示できるようにするシステムで、 三年前の大会で導入を決めたが、 「BSE (牛海綿状脳症) 牛肉などで消費者からの 『安全・安心』 の要求は一層高まっていますので、 さらに徹底しようということです」。 輸入品に対抗できる国産農産物の競争力強化をめざしている。
農業では高齢化が進み、 後継者難にどう対応するかが緊急の課題。 「丹波ひかみ農協などでは、 『帰農者連盟』 という組織ができていますが、 JA全体としての取り組みは遅れています」。 農水省は農地を集約化して大規模農業に力を入れようとしているが、 「中山間地を抱える日本の農業はむしろ、 小さな面積の田んぼの保守・維持管理という面で大きな役割を持っていると思います」 と強調する。
農業の担い手がなくなると、 雑草が生い茂って景観をそこね、 地域の崩壊が始まる。 ひっそりとした過疎の村を訪れると、 何とも言えない悲しい気持ちになるという。 「丹波などは、 地場の農業がしっかりしており、 まだまだ大丈夫ですけどね」。
帰農を考えている人々に、 作物を作る楽しさを知らせたい。 「種から芽が出て成長する、 という喜びを体験してもらい、 それが農業へとうまくつながったら」。
農家の長男だったので、 いずれは帰郷して家を継ぐつもりで就職した。 子育ても一段落したので、 「家も賃貸に替えて、 そろそろUターンを」 と準備を始めた矢先、 役員を命じられ、 もうしばらく仕事を続けることに。 「去年の夏に父が亡くなり、 親孝行のチャンスを逸しました」 と苦笑いした。
(上 高子)