日本最古級のほ乳類化石 篠山で発見

2008.06.16
丹波の恐竜

 県立人と自然の博物館 (三田市) は11日、 篠山市内の白亜紀前期 (1億4500万―9960万年前) の地層 「篠山層群下部層」 (約1億4000万―1億3600万年前) からネズミに似た国内最古級の小型ほ乳類の化石を含む、 化石群集が発見されたと発表した。 切り出した泥岩の一部からは、 哺乳類のほか、 トカゲの仲間の骨や小型恐竜の歯など多数の化石が見つかっている。 昨年、 丹波市で発見された恐竜化石と同時代のもので、 同博物館の三枝春生主任研究員は 「保存状態が良く、 丹波竜の足元にどんな生き物がいたのかが分かる可能性がある」 と期待している。化石は15―29日、 同博物館で展示される。 (森田靖久)

 発見者は、 「篠山層群をしらべる会」 会員で丹波竜発見者の一人、 足立洌 (きよし) さん (64) =丹波市柏原町南多田。
 見つかったのは、 小型ほ乳類の下あご3個体分や有鱗類 (トカゲの仲間) の椎体 (背骨) など分離骨多数、 小型鳥盤類 (恐竜) の歯1点など。
 中でも小型ほ乳類の化石は、 白亜紀前期の地層からの発見例は少なく、 国内では、 石川県白山市、 福井県勝山市に次いで3例目、 世界では55例目。
 篠山層群下部層の年代に相当するものは、 世界でもイギリス、 ポルトガルなど11例しか見つかっておらず、 発見例が極めて少ないため、 進化の過程を知る上で空白と言える状態。 奥歯の形状などから、 篠山層群のほ乳類は新種の可能性も秘めており、 進化の空白を埋める貴重な発見となる可能性がある。
 同博物館は、 地層の化石露出部分 (縦3メートル、 横4メートル) を厚さ50センチのプラスタージャケット (石こう布) の塊にして切り出しており、 今回発表された化石は塊を作る際に切り離したあまりの岩から見つかった。
 これから調査に着手するジャケット本体には化石があることが確実なため、 三枝主任研究員は、 「当時の生態系を知る上で、 宝箱のような状態」 とさらなる発見に期待を示した。
 調査は当面ジャケットのクリーニング作業に集中。 現場での発掘は未定という。
 昨年10月下旬、 足立さんが、 市内の露出している地層で化石を発見したことを同博物館に報告。 調査の結果、 これまで市内では発見されていない脊椎動物のものであることが分かった。 これを受けて、 11月に試掘、 今年5月に本発掘を実施。 化石を含んだ地層を同博物館へ持ち帰り、 調べていた。

 国立科学博物館地学研究部の冨田幸光研究主幹 (古脊椎動物学) の話  「人につながるものの起源と考えらえれ、 世界的な発見。 篠山層群は、 大きいものから小さいものまで発見されているので、 今後当時の生態系を解明する重要な場所になる」

 白亜紀前期の前半に生きたほ乳類は、 「ペラムス類」 「トリボテリウム類」 と分類されているものの、 いまだ多くの謎に包まれている。
 今回発見された歯の大きさから推測すると、 体長は10数センチほど。 ヒトの祖先などを含む 「真獣類」 と、 カンガルーなどの祖先を含む 「後獣類」 が進化の過程で分かれる前段階のものとされる。  
  「トリボテリウム類」 ならば、 ヒトなどにつながるため、 篠山層群のほ乳類はヒトの祖先と言える可能性がある。
 時代は恐竜最盛期。 丹波市山南町で化石が発見された、 丹波竜のような大型の草食恐竜や肉食恐竜などが、 大地を駆ける中、 その足もとの茂みや木の上などに小型ほ乳類が生きていた。
 体長はネズミほどの10数センチが基本で、 大きくてもタヌキくらいとされている。
 肉食恐竜に襲われないように、 大半が夜行性。 主に虫を食べていたと考えられている。 雑食のものや、 極めて少ないが、 肉食のものもいたとされる。 恐竜が何らかの原因で絶滅した後、 ほ乳類が多様な進化をとげた。

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