丹波市長・市会議員選挙が16日、 投開票される (9日告示)。 合併から4年が経過し、 新たな課題も浮上、 市長、 市議には厳しい決断が迫られる。 選挙を前に、 市が抱える重要課題を3回に分けて掲載する。
10月30日、 県立柏原病院を訪れた大分県議会視察団の小野弘利団長は、 「小児科を守る会」 の感想をこう話した。 「どこも公立病院は厳しい。 地元住民の支えが大きな力になる。 小児科の成功は部分的で、 病院全体としては厳しいが、 他の地域は、 部分的成功すらできていない。 この運動を我々も学ばなければ」。
日本の医療再生の光として、 注目を集める丹波だが、 小児科以外は、 深い闇に沈んでいる。
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丹波市の医療機能は、 合併前と比べ著しく低下した。 常勤医は、 県立は44人が20人に、 赤十字は16人が7人 (歯科含む)。 2病院を去った医師が、 残っている医師数を上回る。 病院一つ分の医師が去った。 赤十字からは、 看板科目だった小児科、 産科が消えた。 県立は脳外科の常勤医が去り、 循環器内科も急性心筋こうそくなどの治療が行えなくなった。 4年前、 救急搬送される患者の約90%を市内で収容できたが、 今は約50%だ。
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山東地域に赤十字を移し、 市内の医療不均衡を是正する―。 合併当初の医療問題は、 赤十字の山東移転問題だった。 市立病院を建て、 赤十字を指定管理者にする案は、 費用負担や建設地で折り合わず、 ご破算に。 赤十字の問題が片付かない間に、 中核の県立の医師不足顕在化という大波が襲った。 市は、 「地域医療緊急対策会議」、 「地域医療協議会」、 「救急医療対策協議会」 などを相次いで組織し、 2病院への支援策を検討。 県立の非常勤医への手当ての負担、 赤十字への運営費補助など実現した策もあるが、 実現していないものもある。
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今年度、 2病院勤務医に、 年額100万円を貸し付ける医師研究資金貸与事業に3900万円、 産科開院開設補助に6000万円、 神戸大、 県、 市の三者で県立に医師を供給する人材育成プログラムに5250万円などを予算化。 しかし、 産科開設補助は申し込みがなく、 研究資金貸与も申し込みが現時点で6人の600万円に低迷、 人材育成プログラムも5人予定していたうちの3人しか集まらなかったため、 執行額は1575万円にとどまる見通し。 「予算化はしたものの、 執行ができない」 事態となっている。
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議会が設置した特別委員会は、 2病院支援を打ち出した。 後に、 支援を一本化すべきという会派グループと、 2病院を並立させるため双方に支援するというグループに分かれ、 意見が真っ向対立。 「柏原赤十字の存続と市における地域医療の安定的かつ継続的な確保に関する請願」 と同意見書は、 賛否が14対14の同数となり、 議長が賛成し、 可決。 神戸大学が2病院統合構想を出した今夏以降は、 統合、 並立も議論となり、 9月定例会で、 議員は、 それぞれの立場から辻重五郎市長の姿勢をただした。 市長は、 「知事を信じる」 と、 2病院並立を掲げている。
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丹波医療再生ネットワークが10月25―29日まで実施した市民電話アンケート。 5159件電話し、 1182件から有効回答を得た。 「市議選で候補者を選ぶ時、 医療政策を重視するか?」 の設問では、 76%が 「重視」 と回答した。 調査会社によると22・3%という回答率は高く、 市民の問題への関心の高さがうかがえるという。
医療崩壊はまだ始まったばかりで、 少なくとも今後10年は医師不足が続くと言われている。 これからの10年をしのぐための医療政策の立案と決断を、 新市長、 市議は迫られる。 (足立智和)