兵庫県内でも有数のサル生息地、 篠山。 市内には4つの群れが確認されているが、 昨年から今年にかけて、 普段の行動範囲を超え、 これまで出没しなかった場所に現れる傾向がみられている。 専門家は、 「被害集落での対策が向上したことで、 えさが取れなくなるなどして、 移動しているのでは」 と分析。 対策が功を奏し始めた証拠とも取れる一方で、 行動範囲が拡散し、 新たな被害集落が生まれる懸念も出てきた。 市担当課は、 「これまで出没しなかったところで見かけたら、 すぐに報告してもらい、 地域と一緒になって対策を講じたい」 と呼びかけている。
【京丹波へ越県】
8月7日、 篠山市と隣接する京都府京丹波町の鎌谷下集落に、 突如として60頭近いサルの群れが現れた。 近くにいた男性 (59) は、 「あんなにたくさんのサルが出たのは初めて。 とてもびっくりした」 と目を丸くする。
同地区では、 出没と同時に、 スイカなどの農作物が被害に遭い、 急きょロケット花火などを使った追い払い対策を取った。
篠山市内には、 ▽A群 (西紀北、 西紀、 城北、 岡野校区周辺) ▽B群 (福住などの国道372号線周辺) ▽C群 (火打岩、 奥畑周辺) ▽D群 (筱見周辺) ―の4グループが生息。 市は群れごとに発信機をつけて行動を監視しており、 京丹波町に出没したのは、 この中のA群だったことが判明した。
【全群れが拡散】
市によると、 この拡散傾向は昨年から今年にかけて、 すべての群れで起きているという。
京丹波に出没したA群は、 昨年7月に大山地区にも出没。 農作物被害が出たため、 市と住民が対策を練り、 今年も出没した際にはすぐ追い払った。 また、 丹波市春日町にも現れ、 梨園などが被害に遭っているという。
京都府南丹市から福住地区のB群も、 国道に沿って行動範囲を広げており、 C群も普段より南下。 筱見周辺のみだったD群は、 草ノ上など、 村雲小学校周辺にまで拡大しているという。
サルに詳しい県森林動物研究センター (丹波市青垣町) の鈴木克哉研究員は、 「サル対策が向上したことで、 えさが取れなくなったり、 怖い思いをし、 より安全にえさを取れるところ、 つまり、 これまで対策を取っていない集落を狙って移動している可能性が高い」 と分析する。
【未出没でも対策を】
兵庫県内には約700頭のサルが生息しているとされるが、 篠山では4分の1近い160頭が確認されている。 農作物に被害を及ぼすものの、 地域的には絶滅の恐れもあるため、 追い払いなどの対策を取ることで 「共生」 の道が模索されている。
対策として市は、 電動銃を貸し出したり、 農作物の保護柵や電気柵などの整備のほか、 住民研修会などを開催。 今後はサルに取り付けた発信機を元にした位置情報のメール送信などのサービスも展開する予定だ。
農林課里山係の押田健一係長は、 「農作物のごみを畑に捨てておくだけでも、 サルにとっては絶好のえさ場になる。 拡散傾向にある中で、 これまでサルがいなかった地域も十分気をつけてもらいたい」 と話している。