ナラ枯れ被害が拡大 土砂被害の可能性も

2010.08.19
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 コナラ、 ミズナラ、 カシ類の木が集団的に枯れる伝染病 「ナラ枯れ」 被害が、 丹波地域に急速に広がっている。 この季節、 山々は深い緑で覆われるはずだが、 枯れたナラ類の葉が赤く染まった紅葉が目立っている。 県の調べでは、 丹波農林振興事務所管内では2009年度、 前年度比約30倍増の31・2ヘクタールで確認されている。 県は 「大木から枯れており、 保水力のある木が一度に大量に枯れると、 土砂災害につながる可能性がある」 と危機感を募らせている。
 ナラ枯れは、 カシノナガキクイムシ (カシナガ、 体長5ミリ程度) が、 ラファエレア・クエルキボーラ (ナラ菌) という糸状の菌を木の中で繁殖させることにより、 木の中の水分を通す機能を悪くすることで起きる。 カシナガは、 繁殖させた菌を餌にするという。 ナラ枯れしている木の根元や表面に、 カシナガが入った際にできた木くずが付着していたり、 積もるように落ちているのが特徴。
 県によると、 カシナガは在来種で、 ナラ枯れも以前から見られた。 ナラ類の木は、 以前は薪や炭、 家具の材料として使われていたため、 被害もわずかだったが、 木材価値の下落により、 山の手入れが行われなくなり、 その結果、 大きくなった木から集中的に被害に遭っているという。
 福井、 滋賀県から徐々に南下し、 県内では2005年に但馬地域全域に被害が拡大。 丹波地域では、 07年ごろから市島、 春日、 柏原地域で多く見られるようになり、 篠山でも被害が確認された。
 県は、 丹波、 篠山両市に委託し、 防除に乗り出す方針で、 被害に遭った木を伐採し、 シートで巻き、 木の中にいるムシを薬剤で殺す方法を検討中。 ムシが木の中にいる、 10月ごろから来年春ごろのタイミングがねらい時という。 両市とも補正予算を提案する準備に入っている。
 丹波農林振興事務所は、 「被害が南下しているため、 今のところの被害の最南端である丹波でどれだけ食い止めることができるか。 ただ、 山の所有者や境界が分かりづらくなっており、 対策をとろうにも所有者の了解を得るのに時間がかかる、 というような課題が想定される」 と話している。
 森や木と親しむ環境教育に取り組んでいる高見豊さん (市島町上牧) は、 「山の保水力が落ちるのはもちろん、 ナラ類は、 いわゆるドングリがなる木。 イノシシやクマなどのえさが減ることで、 作物への獣害がさらに深刻になる可能性もある。 神社などの守るべき巨木が被害に遭うのも心配。 ある種が急速に枯れていくことは、 生態系において必ず何らかの影響、 被害が出てくる」 と警鐘を鳴らしている。

(写真)夏なのに“紅葉”が目につくナラ枯れの被害=市島地域で

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