県立人と自然の博物館は7月15日、 県立丹波並木道中央公園 (篠山市西古佐) 内の白亜紀前期 (約1億4500万年―9960万年前) の地層 「篠山層群下部層」 (約1億1000万年前) から、 デイノニクスに代表される鳥に近縁な恐竜 「デイノニコサウルス類」 のほぼ完全な腕の骨格と、 ひざ関節周辺の足の骨格の化石が発見されたと発表した。 同類の骨格化石は、 中国の遼寧 (りょうねい) 省や内モンゴル自治区などで見つかっているが、 国内では、 歯の化石は多数発見されているものの、 骨格化石としては、 2007年に背骨や足を産出した福井県勝山市に次いで2例目。 化石は16日―8月31日の期間、 同博物館で一般公開される。
発見された骨格化石は、 ともに左側で大きさは、 腕の上腕骨で約85ミリ、 尺骨で約71ミリ。 直径10数センチの岩塊の中に密集しており、 足の一部分が石の表面から顔をのぞかせていた。 腕の保存状態は極めて良好で、 上腕骨から指骨までがつながっている。 骨も押しつぶされることなく立体的で、 関節部分もはっきりと残っている。 良好な状態が保てたのは、 発見された場所が、 土の圧力の影響が少ない砂岩層だったためという。
発見したのは、 「篠山層群をしらべる会」 (大森作之会長) の会員、 松原薫さん (62) =丹波市山南町青田=と大江孝治さん (62) =篠山市池上=の2人。 同会は昨年9月、 同公園で実施する化石発掘体験イベントに使用するための岩石を準備しようと、 同公園管理事務所向かいの地層がむき出しなった法 (のり) 面の下で、 転がっている岩石を採集。 その際に発見した。
同博物館の三枝春生主任研究員は 「変形のない腕の骨格化石は、 鳥に進化する前段階の恐竜の前足の機能を解明する上で大変貴重な資料。 今後の発掘調査で、 体のすべてがつながった状態で出てくる可能性もある」 と期待を膨らませている。
今後さらに発見が予想できるため、 7月19日から31日まで非公開で発掘調査を行う。
◆松原さんの話◆ 篠山層群なら化石はどこから出てきても不思議ではない、 という思いを持ち続けながら、 活動を続けてきた。 今回の結果で、 その思いは正しいということが証明された。 全身骨格を見つけるべく、 引き続き、 発掘を続けたい。
◆大江さんの話◆ 貴重な発見だと聞いて驚いている。 「しらべる会」 に所属し、 化石調査をやっている以上、 何かを発見したかった。 それがかない、 うれしく思う。 今後、 なんとか頭部を見つけ、 進化の解明の役に立ちたい。
デイノニコサウルス類には、 トロオドン科とドロマエオサウルス科の2科がある。 今回発見された化石は、 デイノニクスに代表されるドロマエオサウルス科の可能性が高く、 腕の上腕骨の長さが約85ミリであることから推測し、 全長 (頭から尾まで) は1メートルを超えていたとみられる。
同類は、 全身が羽毛に覆われていたため 「羽毛恐竜」 とも呼ばれている。 もともとは、 今回発見された種よりも小型で、 樹上生活を送り、 腕と足に生えていた風切羽を使ってムササビのように滑空していたとされている。
時代が進むにつれて大型化。 今回発見された種にも風切羽があったというが、 足の骨が腕の骨と比べて大きく発達していることや、 1以上の全長からみて、 滑空することはできず、 地上で暮らしていたと考えられている。 また同類は、 鳥と近縁関係にあり、 現代にも残存し、 飛ぶように進化した鳥類に対して、 飛ぶことをやめた恐竜が同類へと進化したとされている。
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