70年ぶり自生確認 県レッドデータAランク「シロシャクジョウ」

2011.08.18
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 丹波市内の山中で、 2010年版県レッドデータリストでAランク (県内で絶滅の危機に瀕している種など、 緊急の保全対策、 厳重な保全対策の必要な種) とされたシロシャクジョウが確認された。 同リストによると、 県内では1941年以降見つかっておらず、 確認は70年ぶり。

 郷土の植物研究に足跡を残した元中学理科教師、 故・細見末雄さん (丹波市氷上町横田) が氷上郡内で見つけて以来。 細見さんが採取した標本が県立人と自然の博物館 (三田市) に残されている。

 発見は昨年の夏。 丹波、 篠山両市の自然愛好家らでつくる丹波自然友の会の会員が山歩き中にヒノキが生い茂る山の北斜面の湿った場所で見つけた。 今夏に同会が行った観察会では、 山道の両脇に1本―数本が点在しながら200メートルほどにわたって自生しているのが確認された。

 葉緑素を持たない腐生植物で、 茎は白色。 マッチ棒のような細さの長さ5センチほどの茎の先端に黄色の花が1―3個咲いていた。

 本州 (近畿)、 四国、 九州、 沖縄県に分布する。 兵庫県では、 細見さんの標本から、 兵庫県南東部のみで確認されており、 他は未確認。 近畿では、 和歌山、 三重、 奈良の一部地域で確認されている。 九州、 沖縄に多く分布することから、 環境省のレッドデータリストにはあがっていない。

 同会は、 同博物館に報告しており、 今後の保護のあり方など、 博物館に助言を求めている。

 植物分類学が専門の鈴木武・同博物館研究員は、 「全国的に見て分布の北限の可能性があり、 貴重な発見」 と評価。 「標本はあるが、 実物が見られない、 いわば 『幻の植物』 だった。 丈が短く、 限られた季節にしか見られないので、 見つけるのが難しい。 友の会の会員に、 いい目を持った人がいたことが発見につながった。 1つ見つかったことで 『見る目』 ができ、 丹波の別の場所で8、 9月に見つかる可能性がある」 と期待を込めている。

【シロシャクジョウ】ヒナノシャクジョウ科。 ヒナノシャクジョウに似ているが、 花は小柄があって散状に集まり、 花筒に広い翼があり、 内花被片が発達しないので区別される。 開花期は夏で、 1年草。 地下茎は生きており、 翌年も前年の近くで咲く。

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