デカンショ節の元歌といわれる 「みつ節」 の民謡に合わせて踊る住民の姿を撮った16ミリフィルムがこのほど、 篠山市中央図書館の閉架書庫で見つかった。 33年前に撮影されたもので、 「みつ節を踊る映像として、 最も古いものになるのでは」 と、 撮影者の酒井勝彦さん (68) =篠山市古市。 「撮った私自身もフィルムを目にするまでその存在を忘れていた。 貴重な資料となるので多くの市民に見ていただき、 みつ節を再認知してもらえたら」 と話している。 視聴覚ライブラリーのホームページで映像を配信中 (http://edu.city.sasayama.hyogo.jp/video/mukashi2.html)。
酒井さんが、 古い貴重な郷土資料を保管している閉架書庫を見学していた際、 ラベルに 「みつ節」 と書かれた見覚えのあるフィルム缶を発見した。 撮影日は1979年8月16日で、 撮影場所は後川新田。 約20分間の映像の中には、 集落の住民らが集まって御詠歌をあげ、 会食を楽しむシーンの後、 約7分間、 みつ節に合わせて輪になって踊る住民の姿が収録されている。
撮りっぱなしで仕舞い込み、 一度も映写しなかったため、 フィルムに傷はなく保存状態は良好。 ただ経年劣化による退色で画像が赤茶けていたので、 デジタル処理を施し、 当時の色味を復元した。
フィルム映像は、 当時、 視聴覚ライブラリーの職員だった酒井さんが、 民謡研究家の前川澄夫さん (79) =大野=から依頼を受けて撮影したもの。 前川さんは、 60年代から篠山市内の民話や民謡を研究・収集。 その過程で、 消え去った幻の民謡といわれていた 「みつ節」 の話を、 74年に今田町四斗谷、 77年に後川新田の2カ所で聞き、 歌詞や踊りの資料を得た。
前川さんによると、 歌詞は素朴で、 節はデカンショ節と共通するところが多く、 囃子 (はやし) 言葉は地域によって多少異なっている。 デカンショ踊りの振り付けとまったく違い、 3回ずつ手拍子を入れながら前進のみで踊る簡素なものという。 後川新田では、 大正時代まで踊られていたとされる。
これらの調査成果を78年1月、 新聞に発表。 これを契機に後川新田では、 住民たちが同年、 約60年ぶりに 「みつ節」 を復活させ、 8月の盆に再び踊るようになった。 前川さんは 「この文化は後世、 貴重な資料になる。 記録映像として残しておきたい」 と、 翌79年、 酒井さんに撮影を依頼した。 今田町四斗谷での 「みつ節」 聞き取り調査の模様も映像に収めたが、 そのフィルムの所在は現在不明。 音声テープのみが残されている。
その後、 みつ節は、 後川小学校の運動会で踊られていたが、 一時期途絶え、 数年前に再び後川地区の夏祭りで踊られるようになった。
前川さんは 「今回見つかったフィルムは、 編集カットしていないために、 当時の人々の生活感情まで写していて大変貴重」 と言い、 「たとえ小さくても、 それぞれの地域に今も残っている文化行事を大事にしてほしい」 と話している。