樹勢が弱まりつつある篠山市大山宮、 追手神社のモミ (マツ科) の巨木を救おうと7月23日、 第一線で活躍している県内の樹木医約10人が同神社に集結。 樹勢改善に向けた治療方法を探るため、 根の状態や幹の内部などを診断した。 その結果、 根が大きく傷んでいることが分かり、 今後3年ほどかけて根の発達を促す治療にあたるという。 また、 幹の内部は上から下まで空洞化し、 煙突のようになっていることも確認された。 このモミは、 国指定の天然記念物。 国への予算申請や許可手続きなどを行うため、 治療開始は来年以降になる見込み。
同神社のモミは、 樹齢が1000年になるという説から 「千年モミ」 の愛称で呼ばれている。 木のてっぺんは落雷により折れているものの、 樹高は約34メートルあり、 胸高幹回りも約7・8メートルの太さで、 モミとしては日本一の巨木。
地元住民から 「上層部付近の葉が茶色に変色してきている。 木が枯れかかっているのでは」 などと通報を受けた篠山市が、 天然記念物の保護などを目的に県が設定した 「みどりのヘリテージマネジャー」 の資格を持ち、 樹木医でもある同市東岡屋の造園家、 小山雅充さん (61) に相談を持ちかけた。 住民の通報以前から 「千年モミ」 の樹勢の衰えを気に掛けていた小山さんは、 早速、 自身が所属する日本樹木医会兵庫県支部に協力を要請した。
診断にあたった樹木医は、 造園家をはじめ、 土壌、 昆虫、 キノコ、 巨木の移植、 ツリークライマーなど、 各分野のエキスパートで、 それぞれの専門知識と技術を駆使して、 「千年モミ」 を隅々まで診察した。
ロープを樹上に渡して、 クライミングの技術で幹のてっぺんまで登り、 樹冠部の様子を確認したほか、 高圧の圧縮空気を噴射して地面に穴を掘る機械 「エアースコップ」 で、 モミの木の根元2カ所を深さ50ほど掘り、 根の状態を調査した。 また、 超音波で木の内部にできた空洞の大きさや状況なども確認。 樹皮に付着したコケや根元に発生したキノコの種類も、 木の状態を知る判断材料にした。
樹木医らによると、 根が大きく傷んだ要因として、 ▽境内の整地のため、 根元周辺に厚く敷き詰めた真砂土のせいで、 根が窒息状態にある▽木の根元周辺の草刈りに使用してきた除草剤▽近年まで、 木の根元で行われてきた焚き火―などをあげた。
大山宮自治会長の澤敏司さん (63) は、 「千年モミは、 何世代にも渡って我々の生活を見守ってきてくれた地域のシンボル」 といい、 「近年、 この日本一のモミを見に来られる観光客も多い。 地元住民の価値観の共有をはかり、 保護に努めていかなくては」 と話している。
県内には国の天然記念物に指定されている樹木が8本あり、 篠山市内には 「千年モミ」 と日置の磯ノ宮八幡神社の 「ハダカガヤ」 の2本がある。
写真・千年モミの根元の地面を掘り、 根の状態を調べる樹木医たち (左が小山さん) =篠山市大山宮の追手神社境内で