市島・前山地区自治振興会 (井上和隆会長) が無償で運行する 「前山ふれあいバス」 が、 10月24日で廃止される。 車両は丹波市が貸与し、 2009年10月から実証運行というかたちでスタート。 有償運行への移行をめざしたが、 市内全地域でデマンド型乗合タクシーの運行が始まったことで、 交通事業者との調整が進展せず、 リミットである3年が経過したかたちだ。
同バスの実証運行にあたって、 市は運行に要する費用の一部を生活交通支援交付金として支給 (年間上限70万円)。 3カ年を期限としていた。 市は 「実証運行」 との立ち位置を強調。 3カ年の間に、 有償運行への移行を促していた。
同バスが運行をスタートさせた当時は、 自動車を運転できない高齢者の生活交通を確保しようと、 JRや路線バスなどがない市内8地域を、 支援の対象とする 「交通不便地域」 に指定。 前山もその一つだった。 09年3月末に同地区唯一のスーパーが閉店したことで、 生活交通の確保が同地区の緊急課題として浮上。 同バス運行が実現する契機にもなった。
当時は、 市も前山の取り組みを推奨する立場をとっていたが、 その後、 デマンドタクシーの検討が始まり、 11年2月に運行がスタート。 前山は同バスを継続させるためにNPO法人の設立も視野に入れ、 有償運送への移行に向けて調整を続けたが、 「タクシー、 デマンドといった他の公共交通と共存できない」 (市都市住宅課) として、 市有償運送運営協議会にはかる事前調整の段階で不調に終わった。 有償運行を行う場合は、 バスやタクシー業者、 市、 県関係者らでつくる同運営協議会の合意が必要。
同バスを利用している一人暮らしの女性 (83) は、 「ボランティアさんにお世話になれるからこそ、 いろいろと用事をしに行くのを助けてもらった。 なくなるとさみしい」 と話す。 自治振興会の井上会長は、 「高齢化する地域において、 外に出かける手助けをしたいという気持ちがあり、 残念だ。 利用者には申し訳ない。 また、 ここまで支えてきたボランティアさんたちにはお礼を言いたい」 と話している。
同課は、 「数多くの交通手段があるのが理想的だが、 すべてが両立できない現実があり、 苦しい判断があった。 デマンドタクシーを利用してほしい」 と話している。
【前山ふれあいバス】2009年10月27日に運行がスタート。 月、 水、 金曜の午前8時―11時まで、 市市島支所周辺の診療所やスーパーまで運行する。 地区内計24カ所に停留所を設けており、 利用者は各家庭に配布してある時刻表で確認して乗車する。